【W杯企画 進化するサイドバック像】

近年、サッカーにおいてサイドバックの役割が大きく変わりつつある。従来のサイドバックはサイドエリアで上下運動を繰り返し、守備では相手のサイドアタッカーに対応し、攻撃ではオーバーラップを行い、クロスを上げるのが役割であった。

しかし、今では戦術の進化によって多種多様な役割をもったサイドバックが存在しており、それが戦術に幅を持たせているのは間違いないだろう。
今回はワールドカップ直前ということもあり、ワールドカップで出場する可能性があるサイドバックの選手に焦点を当てていきたい。

 

現代のサイドバックの役割とは?

 

現代のサイドバックは以下の3種類の役割のいずれかと思われる。


1 クラシカルタイプ

これは従来のサイドバックと同じタイプで、高い運動量でサイドエリアをカバーし、チャンスと見れば、オーバーラップからのクロスで得点を演出するタイプ。また、近年は初期の位置取りを高くし、ウインガーのように振る舞うプレーヤーもいる。


2 ガードマンタイプ

その名の通り、相手の攻撃を防ぐことを主とするタイプのサイドバックだ。低めの位置どりをすることが多く積極的には上がらない。初期フォーメーションが4バックの場合に守備的なサイドバックの選手がこの位置に入る場合がある。
守備力が優れている選手がやることが多いため、必然的にセンターバックとサイドバックを兼任できるプレイヤーが多い、ビルドアップの起点となり、守備では裏のケアやカウンターのために残っていることもある。


3 クリエイタータイプ

テクニックに優れており、低い位置ではプレス回避要員として重宝され、攻撃時には、ハーフレーンに侵入し、中盤の選手のように振舞い、様々な形でチャンスメイクを行う。


以上3つのタイプに分類することができる。多くのプレイヤーは必ずしもこのなかで一つのタイプにくくられるのではなく、いずれか複数の役割をこなすことが多い。

 

各タイプを代表するプレイヤー

 

クラシカルタイプ

【ジョルディ アルバ:スペイン代表】

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ジョルディ アルバは今シーズン、トータルで3ゴール11アシストと例年以上の成績を残した。
アルバはスタミナやスピードが優れているが、特に優れているのは、それを活かしたタイミングの良いバックドア∗である。

メッシが外からゴール方向へカットインしてくるとどうしてもディフェンダーはメッシの動きにつられて外側の警戒がおろそかになる。そのタイミングで裏に走り、メッシがスルーパスやロブパスを出すことによって一気にチャンスへと繋げていた。今シーズンの成績が良かったのはこのパターンが確立されたためであると考えている。

アルバはバルサでも不動のスタメンであり、代表でもよほどのことがない限り、スタメンとして出ると考えられる。是非、スペイン代表の試合を見るときはアルバの動きに注目していただきたい。

∗バックドア
元々はバスケットボールの用語でゴールに向かってのラン

他の注目プレイヤー メンディー/カルバハル

 

ガードマンタイプ

【カイル ウォーカー:イングランド代表】

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今シーズンからマンチェスターシティに移籍してきた。トッテナム時代はどちらかというとクラシカルなプレーを行っていたのだが、シティでは積極的には高い位置を取るプレーよりも、低い位置取りをすることの方が多く見られた。

ウォーカーはスピード、パワー、スタミナとフィジカル面に優れている選手ではあるが、その能力を守備に活かすことの方が多かった。機動力の高さを活かし、徹底的に相手の攻撃の芽を摘み、裏パスやカウンターで後手に回っても、驚異の速さでカバーをするなど、移籍一年目から欠かせない存在として扱われた。また、たまに見せるランからのクロスや、相手をドリブルやトラップで剥がしてからのオープンスペースへのパスなどテクニカルな面を見せることも多々あった。

イングランド代表は5バックが予想されるためハーフバックとして出るか、ウイングバックとして出るか見ものである。

他の注目プレイヤー アスピリクエタ/ピシュチェク

 

クリエイタータイプ

【ヨシュア キミヒ:ドイツ代表】

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元々は中盤の選手であったが、グラウディオラがバイエルンの監督をしていた時に、DFにコンバートされたのがディフェンダーとしての始まりであった。キミヒはテクニックに優れておりボールをロストする回数も少なく、狭いエリアでも局面を打開することができる。サイドでボールを持つと、ただ縦に突破してクロスを上げるだけでなく、カットインをしてからスルーパスを入れたり、サイドのプレイヤーにパスを出してからインナーラップを入れたりと多彩な崩しができるプレーヤーである。また、クロスも一級品で、ピンポイントで味方に合わす浮き球のクロスが得意である。

特に私が注目しているのが、バイタルエリアのハーフスペースで行うロブクロス∗である。これは引いてブロックを作ってきた相手に対して有効なプレーである。敵はクロスの距離が近いため準備する時間がないのと、下がりながらの対応になるため処理が難しく、かといって下がってしまえば、ゴール前にスペースができてしまうので判断に迷いが出やすいのである。このようなタイプのサイドバックはこれから多く増えてくるであろう。

∗ロブクロス
ハーフスペースから繰り出されるロブ(守備選手の頭を越して出すパス)ともクロスとも取れるちょうど中間点のようなパス。

他の注目プレイヤー マルセロ/ゲレイロ

 

従来のサイドバックはただフィジカル面において優れており、守りとクロスさえできればいいとされてきたが、現代ではより多彩なことができ、すべての能力を高水準で備えてなければならない。

特に現代では、プレッシングが流行っているため、サイドバックはハメどころとして狙われやすいためプレス耐性がないと苦しいだろう。また、そのプレスをはがされカウンターを受けたときにも防げる守備力と広範囲をカバーする機動力も必要だ。そして、現代では特に相手ゴール前ではスペースがほとんどなく、そこを打開できるテクニックも必要である。

そのためか、どのチームも両サイドバックともに高いレベルで揃えているチームは少ない。それだけ今は人材が少ないポジションと言えるだろう。だからこそある意味まだ発展途上のポジションとも言えるためこれからのサイドバックの進化に期待したい。

 

記事執筆

【やまザル伝導師】

愛知県/20歳/大学3年/サッカー歴12年/コーチ歴2年半
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