【ベルギー相手に”ほぼ”互角に渡り合った日本 〜大逆転を喫したあの試合で何が起こっていたのか、何をするべきだったのか〜 】

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はじめに

 

何だかんだいい感じに終わったワールドカップを振り返ってみよう!!

正直、個人的にグループHはセネガルとポーランドが突破し日本が全敗すると思っていた。しかし、蓋を開けてみればグループリーグを突破したのがコロンビアと日本で予想がかすりもしなかったという、いい意味で期待を裏切られた結果となった(ごめん日本!)。

しかしながら、ワールドカップ直前にコミュニケーション不足を理由に監督を解任したハチャメチャな国が突破するとは誰が予想できただろうか(なんとズラタンイブラヒモビッチが日本の突破を予想している、ズラタン先輩半端ないっす)。

 

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特に意味はないが、日本代表を料理に例えるとハリルホジッチというフレンチの名シェフがじっくりと食材を下準備してきたのに、突然「実はフレンチより和食が食べたかったんだよね(笑)」という暴論で首にされた後に板前についた西野料理長がハリルホジッチシェフの下準備した食材を塩と味噌で味を調節し、怪我明けの香川という賞味期限が怪しい食材を鍋に入れて火を通したら何かイイ感じの即席料理ができちゃったという感じであった。ではその料理をみていこう!

(全試合やろうと思ったが時間の関係でベルギー戦のみで!ごめんなさい!)

 

日本は前半50秒の香川のシュートに象徴されるようFIFAランキング3位のベルギー相手に臆することなく勝ちにいき、ほぼ互角に渡り合った。


しかしながら逆転負けを喫した。試合では何が起こっていたのだろうか。


ベルギーのビルドアップはスリーバックのアルデルウェイレルト、コンパニ、フェルトンゲンの3枚から始まった。日本はこのスリーバックにプレスをかけることよりもヴィツェルとデブライネの2人へのパスを遮断することを優先した。特にプレミアリーグのアシスト王のデブライネに対しては香川と柴崎と大迫のうちの誰かが必ず即座にプレッシャーをかけるポジションを取りながらセンターバックに対してプレッシャーをかけるタイミングを探っていた。


具体的にはコンパニからセンターバックの両端のアルデルウェイレルトとフェルトンゲンへの中長距離のパスをスイッチに日本の原口と乾がハイプレスをかけようとしていた。原口と乾がハイプレスをかけた際にベルギーのウイングバックのマークは酒井と長友に受け渡される予定であった。


しかし、ベルギーのウイングバックは日本のサイドバックがマークに付くには高いポジションを取ったり、右ウイングバックのムニエは内側にポジションを取り、乾を長谷部の横まで引っ張っていきメルテンスへのパスコースを確保したり、またシンプルにルカクにボールを入れるなど途中から見られ、ベルギーの即興的な修正力や適用力、戦術理解度の高さが感じられた。またベルギーは特に左サイドを拠点にビルドアップを行った。


具体的にはフェルトンゲンがタッチラインぎりぎりのポジションを取り、それに連動しドリブルを武器とするウイングバックのカラスコを高い位置に押し上げ2列目が左カラスコ、トップ下アザール、右メルテンスのようなシステムに変形した。ムニエが高いポジションを取り、4バックであれば右サイドバックがいる位置にはヴィツェルが落ちるなど変則的なビルドアップであった。左サイドでボールを回し素早く右サイドに展開し縦への意識が強いムニエを活かしたり、日本がハイプレスを仕掛けてくる場合はルカクに入れプレスを回避した。

 

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ベルギーに対して日本はグループステージの試合と同様に右サイドから中央を経由する形でビルドアップを行った。センターバックの吉田と昌子の間に長谷部が降りてきて(スペイン語でサリーダラボルピアーナという)相手フォワードを引きつ
け時間とスペースを作り、左センターバックの昌子にドリブルで持ち上がらせ相手の中盤にマークのズレを生み出す。


また、柴崎が吉田の斜め前でパスを受け、逆サイドの長友や乾に大きく展開し相手のプレスを回避するなど工夫されたビルドアップが見られた(セネガル戦はこの形で1点目を決めた、ただアザールとデブライネが柴崎のパスコースを限定していたためセネガル戦のような時間とスペースが無かった)。


また、日本はサイドバックが高いポジションを取りそれに連動しサイドハーフがハーフスペースでボールを受けるというのが鉄板であったが、乾がボールを受けるとすぐにアルデルウェイレルトがプレスをかけてきて自由にさせてもらえなかった。日本は大迫への縦パスや中盤でのボール奪取をスイッチに縦にはやい攻撃を仕掛けた。


後半開始直後には柴崎の素晴らしいスルーパスに反応しフェルトンゲンのウラに抜け出した原口が実況に「シュートを打つのを迷った」と言わせる実況をも騙した素晴らしいフェイントでクルトワを翻弄し先制点を挙げると、前のめりになったベルギーに対して乾が鮮やかなシュートをエリア外から決め2-0のリードを作った。


この試合で香川は試合を通じて相手の2ライン間でボールを引き出し日本に攻撃のリズムを作った。そして長谷部はピンチの目を摘み続け、吉田は水際でルカクにシュートを打たせず、長友はいつの間にか前線にいるムニエを何とか抑えていた。大迫もコンパニ相手でも相変わらず後ろ向きボールをめっちゃトラップして時間を作り、ファウルを貰った。それぞれの選手が自分のタスクを高いレベルでこなしベルギーとほぼ互角に渡り合った。

 

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問題はここからだ。2点リードされたベルギーは高さもあり非常に質の高いクロスを入れるシャドリと空中戦にめっぽう強い194㎝のフェライニのアップを始めた。日本はこの段階で相手が空中戦に攻撃を帰着させようとしているのが分かったはずだ。個人的にはフェライニのアップを見て戦術変更の準備をして、フェライニがベルギーの右サイドのメルテンスと交代し日本の1番空中戦が弱い左サイドを叩きにきたと確認したら即座に高さ対策の戦術を打って欲しかった。


例えば、香川に代えて空中戦に長ける武闘派センターバックの植田を投入しセンターバックを三枚並べ空中戦迎撃体制を整え、リードを守りきろうとするなどして相手に対応したかった(この場合、相手に押し込まれる展開が予想されるので原口と本田を交代し前線のキープ力を上げる)。


フェライニが投入されたのが20分でそれから9分間にヘディングで2失点したのは明らかに監督の能力の差ではないだろうか。2点目は長谷部がフェライニと競る状況が発生しており、起こるべくしておきたと言える。


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また、後半からパスの循環に大きく関与しチームにリズムをもたらしたアザールはマンマークされると試合から消えるというデータも手元にあったはずなので(イングランドプレミアリーグのマンチェスターユナイテッドとの試合でアザールはエレーラにひたすらマンマークされて試合から消えていた)守備職人の山口にひたすらアザールをマンマークさせても良かったのではないだろうか(アザールは酒井が足をつったとみると左サイドでプレーした)。


そして柴崎は、アザールとデブライネのマークや日本のビルドアップにおいて多くのタスクが課されており後半ガス欠状態で、交代させざるをえず山口と本田の同時投入は選手へのメッセージとしては守りに入るのか、攻めるのか曖昧になってしまった(もう少し早いタイミングであれば大島を出してボールキープに特化しても良かったのではないか)。


3失点目のベルギーの高速カウンターを防ぎきれなかったのは、本田のコーナキックのボールがカウンターを招いたという声があがっているがラストワンプレーという局面で1点を取ってやろうとする本田の気持ちも理解できる(ボールの精度は悪かったが)。
また山口の対応も悪かったという声があがっているが、後ろに広大なスペースを残しデブライネやルカクの高速カウンターを防ぎきる守備力を持った選手が世界中を見渡して何人いるか考えてほしい(個人的にはいないと思っている)。


したがって個人的には3失点目の理由を探すよりも何故相手が交代カードを切ってから9分間で2失点した理由を考える方が必要だと思う(3失点目の対応を分析する必要がないとは思っていないが優先順位的に)。

 

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まとめ


西野監督は少ない時間で非常にいい仕事したが(そもそもハリルホジッチを解任した時点で時間が無いのは分かりきっているので時間が足りないは言い訳になり得ない)、相手が攻撃の仕方を明らかに変えてきたことに対応出来なかったのが0-2から大逆転を喫した原因の1つだ。


ポーランド戦とは異なり試合の終わらせ方に明確な方針がなかった。また今回のワールドカップでは今までの散々言われてきた決定力不足も大きな問題ではなく(セネガル戦とベルギー戦は相手のシュート数の半分以下でそれぞれ2点取った)、相手より少ないチャンスを決め切り、攻めるべき局面では縦に早く攻めるなど、なんちゃってポゼッションサッカーに終始することなく新しい日本のサッカーを見ることができた。このワールドカップを次のカタールワールドカップや東京オリンピックへの準備に生かしてほしい。


最後に、ありがとう日本!!!!

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記事執筆

【m.yusuke】

モウリーニョに感化され指導者としての勉強や戦術の勉強を始める。 高校で選手を引退し、現在は同志社大学スポーツ健康科学部でスポーツ科学を学び、同志社大学体育会サッカー部でアナリストとして活動中。和製ナーゲルスマン目指して頑張る大学生。