【レアル・ベティスvsアスレティック・ビルバオ マッチレポート】

【レアル・ベティスvsアスレティック・ビルバオ マッチレポート】

ラ・リーガ第五節 レアル・ベティスVSアスレティック・ビルバオ。勝ち点で並ぶ2チームがぶつかった試合は、2対2の引き分けに終わった。ビルバオは前半の7分にイニャキ・ウィリアムズ、18分にラウル・ガルシアが得点し2点のリードを得たものの、前半終了間際の45分にスサエタが2枚目のイエローカードを受け退場。数的優位となったベティスは51分のバルトラ、68分のカナレスのゴールで追いつくも、残りの20分強を守り切られ、勝ち点1を分け合うに留まった。 

11人対11人の前半、そして11人対10人となった後半に分けて、ピッチ上の出来事をベースに、両チームの取った戦術を分析していく。

【前半 ハイリスク・ハイリターンのプレス回避】


これまでの試合と同じくベティスがボールを保持する展開となった前半。ビルバオはハイプレスを仕掛けてきたが、3節のセビージャ戦とは違い、ベティスはあまりロングボールを蹴っていない。この原因はビルバオのプレス方法にあると考えられる。下図はビルバオがプレスを仕掛ける際の陣形の一例だが、注目してほしいのはその最終ラインだ。 

SBはベティスの2シャドーに対してそれぞれほぼマンマークで付いているが、1トップのサナブリアに対してはCBが2人で付いているため、最終ラインで数的優位を得ているのだ。セビージャ戦で最終ラインが3対3、2対2等少なめの人数で同数になった時にロングボールを蹴る傾向があったことから考えると、今回ロングボールが少なかったのはベティスから見て最前線の局面が基本的に数的不利だったからではないかと考えられる。 

しかしマンツーマンでプレスをかけていけば当然、GKを除いた全ての局面で同数となるはずだ。なぜビルバオは、最終ラインで数的優位を保つことが出来たのだろうか。上図を再び確認してほしい。ビルバオの右SHスサエタは、ベティスのシジネイとフィルポの中間にポジションを取っている。実際はずっとここにポジショニングしていた訳ではないが、フランシスをチェックする左SHのベルチチェに比べてスサエタが高い位置をとっていたのは確かだ。

スサエタはシジネイからフィルポへのグラウンダーのパスコースを切り、シジネイがボールを持っていない場合でも彼へプレスに行けるような高めのポジショニングをしていたが、これは同時にCBやGKからフィルポへの浮き球のパスをけん制するポジショニングともなっていた。

またこの時押さえておくべきは、ベティスの3CBに対するビルバオ前線の2枚、トップのイニャキ・ウィリアムズとトップ下のラウル・ガルシアのプレス戦術だ。戦術というほど大仰なものではないかもしれないが、前半の2人のプレスには以下のような明確な方針が見えた。 

まず左CBのシジネイに対するパスが出た時、前述の位置取りをしているスサエタがプレスに行けない(行ってもフィルポにボールを通されたり等不利になりそうな)場合はラウル・ガルシアがプレスに行く。そしてイニャキ・ウィリアムズは、アンカー的なポジションを取るバルトラと、右CBマンディの中間にポジションを取る。そして逆にマンディにパスが出た場合は、ラウル・ガルシアがバルトラとシジネイの中間にポジションを取り、イニャキ・ウィリアムズがマンディにプレスに行く。 

 

この2つの状態は移動距離も少なく簡単に循環させられるため、ベティスとしてはCBやGK間ではパスを回せるが、それ以上前にはマンツーマンで付かれているという状態になる。さらに状況によってはスサエタがシジネイにプレスをかけることによってラウル・ガルシアやイニャキ・ウィリアムズがGKへプレスに行くことすら可能となり、最終ラインでのボール回しも安泰とは言えない。 

ここでベティスが取った対策は主に2つ。一つはマークにつかれていることを承知の上で、一列飛ばしたシャドーの2人、カナレスとホアキンに縦パスを入れること。そしてもう一つが、フェイントやボールコントロールでCBが相手の逆を取ってプレスをかわし、そのまま持ち上がることだ。 

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前者の対策はカナレスやホアキンがデュエルに勝利できるかという面で賭けと言える部分もあった。実際彼らがワンタッチでパスを繋いだり、マークを躱して前を向けた場合などは空いているフィルポを使うことも可能となりチャンスになっていたのだが、例えば2失点目は、まさにホアキンに対するプレスから徐々に状況が悪化しカナレスのパスがつながらなかった結果ゴールを奪われた形であり、相応のリスクはあったはずだ。

そして後者のCBが持ち上がる方法だが、こちらはビルバオの前線二人が躱された後に対面のCBのマークを離してしまいがちな傾向も手伝ってリスクよりも大きく利益を得ていたという印象だった。しかしCBがそう頻繁にプレスを躱せるわけではなく、また強引に運ぼうとして奪われた時に一気に危険な状態になるという点もあってか、この対策が見られたシーンは前者程には多くなかった。 

結果的には2点を奪われたベティスだが、ポイントはやはり上記の2シャドーのデュエルだろう。1失点目はフィルポのクリアミスに加え、カナレスが対面のSBに簡単にパスを通させてしまっていること、中央でCBの2人が重なってしまっていることなどここの小さめの粗が重なった結果の失点だったように思える。戦術的にはやはり2失点目の方が、ベティスの攻撃のリスクをより象徴していたと言えるだろう。
 

【後半 奪い切れなかった決勝ゴール】 


一人少なくなったビルバオはハイプレスを早めに切り上げて自陣へ戻るシーンが多くなった。その守備は少しゾーン寄りになったが、以前マンツーマン志向の強いものだった。逆サイドのCBにプレスに行かないことでCB以外に対しては基本的に誰かがマークに行けるようになっていたのだが、ある程度の高さまでボールを持ち込まれた際にはクロスに備えてか中央の数的優位を確保してCBを二人フリーにするシーンも見られた。 

これに対してベティスは選手交代によってポジションを変えたり、またシャドーが左右に広く動くことでスペースを創り出そうとする。一点目は右サイドのボール回しから、マークを受けていなかったCBバルトラにボールが繋がり、ミドルシュートにより生まれたゴールだった。

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二点目の起点となったのもまたバルトラだったが、これは左サイドに開いたテージョへのマークを外してしまっていたのが大きいだろう。このシーンではSBがホアキンをマークし、SHがカナレスをマークすることでテージョが開いてしまっていた。流動的に選手が動くベティスの攻撃に対してマークが混乱していたかもしれない。 

またベティスは2点目が入った後の70分40秒のシーンで前に出て来たビルバオ中盤の裏をとって決定的なチャンスを作ることに成功しており、ビルバオとしてはこの時点でプレスには行きづらくなっただろう。守備陣形が低くなってしまうためにカウンターになるシーンは限られ、また前線の選手も左右に振られる中で守備をする必要があるため体力的にも厳しかったと考えられる。

ムニアインはカウンターから独力でのチャンスメイクを狙って投入されたと思われるが、 得点があったのは68分だが、75分に行われたクーリングブレイク後はサイドの選手をフリーにしない傾向がより強くなっていたと言って良いだろう。

ベティスはサイドからのクロスが主な攻撃手段となり、中央とクロスの出しどころに人数を掛けられて決勝点を奪うのが難しくなっていた。とはいえ前述のカウンターのシーンやサナブリアに訪れた71分のスライディング、85分のヘディングのチャンス等決定的なシーンは少なくなかった。どれか一つでも決められていれば勝ち点3を得れていただけに、決定力不足が悔やまれる後半となった。 


【まとめ】 


結果論ではあるものの、後半の決定機逸以上に序盤に2失点してしまったのが大きい。2点目は特にビルドアップのライン突破時にシャドーを使う傾向を逆用された感があり、サイドでフリーになっていたフィルポなどがもっと流動的に動くなどしてリスクを回避出来た可能性が十分にある。相手の積極的なデュエルがカードを誘った面はあるにせよ、相手が退場することはそう望める展開でもない。高い支配率を決定機に持ち込む力と、決定機を決めきる力が今後より一層求められてくるだろう。


記事執筆

【hana】

大阪府在住/大学二回生/19歳
サッカー経験ゼロ
将来の夢:大舞台で自らの理論を実践すること
Twitter:https://twitter.com/hanasoccer4