【サッカー未経験から挑む指導者への道】

ポルト、チェルシーなど数々のビッグクラブを指揮し、現在マンチェスター・ユナイテッドで監督を務めるジョゼ・モウリーニョ。若手監督としてホッフェンハイムを率い、CL出場まで導いたユリアン・ナーゲルスマン。彼らは共通してプロサッカー選手としてのキャリアがない監督だ。彼らはプロ選手としてのキャリアはないものの、アマチュアでの経験はある。Vektorでは今回、これまでサッカー経験のない学生指導者である木室孝輔氏のインタビューを行った。


【監督に憧れた少年時代】


ーよろしくお願いします。木室さんは今何をしていますか?

大学に通いながら、母校のサッカー部で指導者をして1年ほど経ちます。

ー具体的にチームでは何をするのでしょう。

試合中の役割は声掛けを監督が行い、自分はハーフタイムに戦術的な修正をボードを使いながら説明する役を担当しています。ありがたいことに自由にやらせて貰っています。

ー試合以外の普段の練習では何かしていますか?

練習メニューを考えています。最初はスムーズにはいかないですよね。この練習でやりたいこと、起こしたかったことが起こらないということもありました。

今は新チームでシーズンに向けて構築する段階で、はっきりした原則を決めた上で、お試しも取り入れていきたいという感じです。理想のやりたいサッカーはありますが、共通の認識がないと、前と後ろバラバラになって狙われてしまうので、そこを原則決めてやっています。結果が出るのが半年後とかになるので、難しいことを簡単に噛み砕いて、どこを抽出して教えてあげるのか。それが自分の役目と認識して、良い経験をしています。

ー今後がとても楽しみですね。現場での活動以外はどのようなことをしていますか?

関西で指導者のグループが出来ました。そこではお互いの練習見学をして、フィードバックを貰えるようになりました。逆に別のチームで、別の指導を観ることができて、言い合える人がいるのは大きいと感じています。

ーそのような経験はなかなかないですよね。

はい。なので気付かされることばかりです。練習メニューの組み方や声掛けの仕方は皆違うので勉強になります。自分が教えるスタイルを模索中ですし、常にオンラインでもオフラインでも勉強をしています。

ーサッカー未経験と書いてありましたが、これまでは何をされていたのですか?

水泳を中学3年生になるまで続けていました。スポーツ経験は水泳だけで、サッカーをやろうという思考にはならなかったです。

ーサッカーを観るのが好きだったということですか?

もともとは野球が好きで、サッカーには興味がなかったのですが、中学生に上がる頃、ACミランvsユベントスの試合を観て引き込まれました。日本代表の試合とは全く違うなと。そこからハマっていきました。

ーサッカーに引き込まれてどうでしたか?

監督の偉大さ・かっこよさに興味を持ちました。その頃からサッカーの監督になりたいと思いました。

ーサッカー選手になりたい!ではなかったのですね。監督になるために何か勉強をしていたのでしょうか?

たくさん試合を見ていたわけではないですが、当時は中学生なりに分析していました。戦術に興味を持っていたので、どちらかのチームの監督の目線になって観戦していました。相手に対して、この監督ならどうするのかを考えていましたね。

ーその後、高校では何か変わったことはありますか?

それまでサッカー雑誌を読む程度でしたが、戦術や監督の本を読むようになりました。

ー特にサッカー部と関わりを持ったわけではないのですね?

そうですね。音楽が好きだったのでバンドを組んでギターをしていました。それでも入学した時は軽音部がなかったので、同期を集めて学外でライブをしていました。ただ、外での活動は評価されないので、他校と合同ライブして、活動の実績を作って3年のときに同好会を部活に昇格させました。

ー とても面白い活動をしていたのですね!その後の進路は考えていましたか。

当時は見通しが甘くて、どこかの大学を卒業してから海外に行こうと考えていました。監督の夢が潰れたときの保険も考えていたり、地元の友達と離れたくなかったりで、関西で行ける一番高い私立を狙いました。描いてみないことにはどうなるかわからないので、可能な限り上を目指してみようと。


【イングランドで見た現実】


ー当時は監督になる計画は立てていたのですか?

サッカー経験が全く無いので、サッカーサッカーするよりも他の知識を入れてから将来の目標に向かいたいと考えていました。

ー大学ではどのような勉強をしているのでしょうか?

商学部で今は統計を専門に勉強しています。それに加えて、マーケティングと国際経済、経営戦略などを学んでいます。

ー指導者の活動では何かしましたか?

本を読む量を増やして、Twitterでも有名な人をフォローして情報収集していました。現場に関することでは、1回生の秋にC級ライセンスを取りに行って、指導の基礎を学んだり、春にイングランドに行ってFAライセンスレベル1を取得してきました。

ーイングランドの話を詳しく聴きたいです!笑

大学を卒業したら海外という考えがあったので、イングランドに行ってきました。たくさんの方と話すことができましたし、自分と同じようなプレー経験なく監督を目指している人と会ってきました。

ー実際に現地に行ってみてどうでしたか?

現実を見てきました。(苦笑)

ーどのようなことですか?

自分にはプレミアの監督が最終ゴールにあって、まずは下部リーグのスタッフになって、叩き上げで行こうと思っていました。それを現地に行ったことで現実を見ることができ、まずは日本で経験積んで、そこから海外行くのが確実じゃないかという考えに至りました。

ーイングランドから帰国してどのようなアクションをとったのでしょう?

帰ってきてから大阪の高校に自分で売り込みにいきました。チームでの指導を初めて経験して、今の母校のチームに移るまでの半年ほど指導していました。

ーチームでの指導は初めただったのですね。何か難しかったことなどありましたか?

大変だったことは、サッカー未経験だったためにサッカー部の練習を見たことない状態だったことです。どんな感じで進んでいくのか全くわかりませんでした。それでも運が良かったのが、選手はやる気があって、規律あって、練習がスムーズに進んでいて。チームに恵まれました。

ー他の競技の練習はわからないものですよね。

それでも良い面もありました。自分にはプレー経験がないという理由で話を聞かない選手はいなかったことです。これは嬉しい誤算でした。

ー何か指導する上で意識していたことはあるのですか?

質問されたときにはぐらかさずに、明確に答えること。それを意識していました。

意見を言うと選手も返してくれて、そこで議論になります。自分にとっても選手目線を知れて、選手も外からの意見を聞くことができます。対話することで発展していくのでお互いにとって良い結果をもたらしています。


【プレミアリーグの監督を目指して】


ー将来はどのような指導者になりたいですか?

今は自分で考えたメニューもすぐ変えたりします。絶対に譲れない部分もありますが、選手と話して、マイナーチェンジしながら練習に柔軟性を持たせています。正しいかどうか分かりませんが、やりたくないメニューをやらせるのは違うと思います。もともと意図してたのと違ったら駄目ですけど。

ー選手のことを考えているのですね。

そうですね。高校生年代は最悪楽しくサッカーできたらいい。そこは大事にしたいです。面白くない練習が嫌だし、コーチと選手の関係が悪いといいことはありません。もちろん試合では絶対に勝ちたいですが、楽しくやるほうが重要だと思います。選手のモチベーションを上げる状態を作っていきたいですね。

ー最終的には何を目標にしていますか?

最終目標はプレミアリーグでの監督です。そこへのアプローチであればどんな形でも良いです。

ープレミアの監督に拘る理由は何かありますか?

子供の頃に面白いと思ったからです。その頃からの夢で、単純な憧れです。指導者を目指しているのも子供の頃からの夢。逆に書けるほどの理由もありません。それでも今まで周りの人にずっと言ってきました。監督になりたいと。今では言っておいて良かったと思います。言わなければいくらでも逃げれるので。

ー子供の頃からの夢を追いかけ続けるのは素晴らしいと思います。今後はどのように進む予定ですか?

逆算したときに、大学院でスポーツの勉強をしてからJリーグに飛び込むのが堅実かなと思っています。今いきなり、売り込み行ってもいいのですが、経歴もないので、門前払いも普通にあると思うので。それでも選手経験ない時点で前例はないので、無謀なことをしてもいいかなと考えています。

ー直近では何かしたいことはありますか?

もっと関西の人と会って話したいです。この記事を読んで、連絡を貰えたら最高です。一緒に分析したり、繋がれたら面白いなと思っています。

ーそれでは最後に今後指導者を目指す人へのメッセージをお願いします!

サッカー経験がない人でも指導は全然できます。ですが、その分勉強しないといけません。いろいろな情報を吸収したほうがいい。自分はこう思うからこの意見は見ないというより、どんな記事でも片っ端から読むことで、補えることがあります。インプットしていかないと、経験していないので。むしろそれくらいじゃないと戦えないと思います。

ー本日はありがとうございました!


プレミアリーグでの監督を目標に掲げる木室氏。彼は「根拠のない自信」を大事にしていた。それは決して何もしていないわけではなく、その自信を信じて最後までコツコツと積み重ねて大きな自信へと変えていくということだった。可能な限り上を目指す彼の挑戦をVektorでは今後も応援していきたい。


【木室 孝輔】


同志社大学 商学部 3回生

大阪市立東高校サッカー部コーチ。C級、FAライセンスレベル1保持。
将来サッカー監督になる為に勉強中。
Twitter:@ko_suke_k1
Blog:football-kosuke.hatenablog.jp

取材/執筆

【藤原】

Vektor創設者/インタビュアー
Twitter:@k0sk_vektor