【レアル・ベティス vs FCバルセロナ マッチレポート】

ラ・リーガ12節、バルセロナがカンプ・ノウでレアル・ベティスを迎え撃った試合は、最終スコア4-3の打ち合いに終わった。共にボール保持を志向し、そこに強みを持つチーム同士の試合は、戦前の1位対15位という順位とは裏腹に、アウェイのベティスが主導権を握る展開となる。なぜバルサはホームでベティスに敗れたのか。 なぜベティスはバルサに勝つことが出来たのか?。その原因は主に、ベティスの守備にあったと考えられる。

ベティスのスタメンは上図の通り。9日のミラン戦に先発したメンバーのうち、サナブリア、カナレス、フェダルの3名を除いた選手らが引き続き先発。そしてそれぞれ、ロレン、グアルダード、シジネイが代わってメンバーに入った。

対するバルサのスタメンは上図の通り。コウチーニョを負傷で、デンベレをコンディションの問題で欠く最前線には負傷から復帰したメッシが右に入り、左にマウコムが入った。CBウムティテイは負傷明けでベンチ入りを果たしたものの、ピケの相方としてピッチに立ったのは7日のインテル戦に引き続きラングレだった。中盤、SBの構成もインテル戦と同様である。

 

【ベティスの守備 バルサを惑わせた完全マンツーマン】


前半、ベティスは高い位置からのマンツーマン守備を敷いた。配置のかみ合わせは、例えばゴールキック時には以下のようになる。

最前線から最終ラインまで、全ての位置で一対一のマークが実現されている。フリーなのはGKのテア・シュテーゲンだけと言ってもよいだろう。多くのチームは最終ラインに4枚以上のDFを残すか、あるいは数的優位を確保しようとするが、ベティスはリーガ一位の相手に対して3対3の状況を受け入れつつプレスを仕掛けた。

このようなハイプレスに対してはDFと同数かつ前方に広大なスペースを得ているFWに向かってロングボールを送り込むのが普通であるが、バルサは単にそこに蹴り込むのではなく、いくつかの方法で工夫を加えていた。その主たる例が、アルトゥールがブスケツの横に落ちて最終ライン付近で優位を得ようとするやり方である。

この方法は基本的には2段構えの戦術になっており、落ちたインサイドハーフ(ここではアルトゥール)に相手のマーカー(ここではグアルダード)が付いてこないなら、当然ボランチがそのままボールを受け、フリーでビルドアップを開始できる。そしてマーカーが付いてきた場合は、マーカーが開けたスペース(下図参照)にボールを送ってより高い位置でスペースを得ることが出来る。

実際の試合、ほとんどのシーンでは、グアルダードはある程度アルトゥールについて行きながら、必要以上に近づくことはなかった。すなわち、アルトゥールにボールが出た時にプレスをかけられる最低限の近さは保ちつつ、中盤のスペースを出来る限り小さくできるようなポジショニングを取っていた。

バルセロナとしてはフリーでないアルトゥールにボールを出してもスムーズなビルドアップは見込めないため、中盤のスペースにボールを供給する機会が多くなる。この位置にはメッシやスアレスが少し下がり目になってパスを受けに来るのだが、ベティスはそこにCB、多くの場合バルトラが必ずついて行っていた。

一時的に最終ラインは2対2以下の同数になるため競り合い次第では一気にピンチに陥る可能性もあり、実際スアレスがトラップでバルトラのプレスを上手くいなしてシュートまで繋げたシーンも見られたが、トータルで見ればこのリスクがネガティブな結果として現れた場面は少なかった。

マンツーマンでは、ゾーンを守る場合に比べてより一対一の守備能力が要求される。誰か一人がマークを剥がされるとそこに別の誰かがマークを離して対応しなければならず、全体にズレが生まれてしまう。そのような点から見れば、ベティスの守備陣が実際に各ポジション、各局面でのデュエルに十分勝利していたことが、この試合のポイントの一つと言えるだろう。

 

【バルサの守備 前がかりの攻撃的プレッシング】


対するバルセロナの守備は、人か場所か、マンツーマンかゾーンか、という点で言えばかなりマンツーマン寄りの守備をしていたが、ベティスのそれとは少し趣向が違った。

具体的には、ボールに近い誰かが相手のボールホルダーにプレスに行き、周りの選手が近くの相手選手、すなわちパスの受け手となりやすい選手に順次マークに付くことで、相手を「詰ませて」しまって、ボールを奪い切ろうという意図が見えた。

特に目立ったのが、前からではなく、前へ向かいながらプレスしていく意識だ。すなわち、後ろにはあまり下がらない。自分の前と後ろ、同じくらいの距離にマークするべき選手がいれば、前を選択する。恐らくは前というよりもボールにより近い受け手を潰すことに意識を置いていたのではないかと考えられるが、結果的に前に前にどんどんエリアを上げていくような現象が見て取れ、特に前半立ち上がりの数分、ベティスはいい状態の味方を見つけられないままパスを出させられ、ろくにボールを回せていなかった。

ただこの試合に関して言えば、バルサの守備はベティスほど完成度が高くなかった。センターサークルくらいの高さまでボールを運ばれるとメッシやスアレスのプレス強度が目に見えて落ちるのだが、その状況でも依然中盤のプレーヤーは前に行く意識が強く、加えて2枚のCBはあまり前に出てこないので、中盤のプレスで出しどころを抑えられなければライン間のスペースを簡単に使われてしまう。

またボールを刈り取ろうとして細かいパスで躱されたり、あるいは大きくサイドに展開されたりすると、疑似的なカウンターのような状態になり一気に重大なピンチに陥っていた。そして高い位置からプレスをかけていけるような場合でも、ベティスに空いているプレーヤーを使われるようなシーンは散見された。

CBが前に出てこないのがベティスとの最大の違いで、高い位置にいたホアキンが降りて来ることによってフリーになりボールを引き出すようなシーンは多く見られた。守備の意識が前へ向かっている以上、ライン間に下がったプレーヤーは最終ラインで見るしかない。ここにプレスに行けなかった・行かなかったことが、ベティスのビルドアップを助けた大きな要因の一つと言えるだろう。

一度フリーなプレーヤーにパスが通ればマークはズレざるを得ないので、さらに新しいスペースを使う余地が生まれる。もちろんライン間にいくらフリーな選手がいようとそこにパスが出なければ問題はないのだが、結果的にはそこを使われてしまっていた。ベティスの個人、あるいは少人数のユニットにおけるボールを扱う技術が、バルセロナのハイプレスをかいくぐってライン間にパスを出すのに十分なクオリティに達していたということも、また重要なポイントの一つだろう。


【得点を生んだカウンターと、テージョの裏】


試合を動かした重要なシーンの一つとして、当然ながらベティスの先制点が挙げられる。この得点は、バルサのCKをベティスがクリーンな状態でマイボールとしてカウンターを開始し、上手く抜け出したフィルポにカルバーリョの素晴らしいスルーパスが通って生まれたゴールだが、バルセロナの守備はグアルダードやロレンのボールコントロール・パスに翻弄されて奪いどころが絞り切れていない。そのうえ一度躱されたプレーヤーの戻りが遅く、前方面のパスコースを開けてしまっている。

単純にカウンターへの対応が甘い、守備の意識が軽いと片付けることも出来るが、ここではこれがセットプレーからのカウンターであるという点に注目したい。ホアキンが弾いたボールをグアルダードが受けた時、バルセロナの選手の内キッカーを含めた7人が、ある程度戻って守備せざるを得ないポジショニングにいる。

前へ前へと向かっていくようなプレッシングは、このようなカウンターの場面では中々実行できない。27分にもFKのカウンターからチャンスが生まれかけており、全体として数は少ないながらも、バルセロナの守備のやり方がはまりにくい形として重要な状況の一つだったと言えるのではないだろうか。

そして確認しておきたいのが、バルセロナの左サイドからの攻撃だ。一点目のPKを獲った攻撃シーン、2点目のビダルのゴールはいずれも、ベティスの右WBテージョの裏を取って生まれている。攻撃面では2点目をアシストするなどの活躍を見せていたが、最終ラインの一角としては裏への意識が不十分だったと言えるかもしれない。フィルポが裏を取られるようなシーンがほとんど見られなかったことからも、システムよりも個人のクオリティの問題と捉えるべきと考える。

【まとめ】

バルセロナの弱点と自らの強みを上手く合致させ、マンツーマンで攻撃を封じて貴重な勝ち点3を得たベティス。しかし順位はまだまだ上を目指していきたいはずだ。この試合ではバルセロナが引かなかったことが得点を生む大きな要因となったが、引いた相手を崩して勝ち点を奪えるようになるかどうかが、今後の大きな焦点となるだろう。

 

記事執筆

【hana】

大阪府在住/大学二回生/19歳
サッカー経験ゼロ
将来の夢:大舞台で自らの理論を実践すること
Twitter:https://twitter.com/hanasoccer4