地元・福岡を離れ、名古屋でトップを目指す。キックボクシング・荒尾彰が選んだ道

インタビュー

19歳でキックボクシングを始め、21歳でプロデビュー。

現在は名古屋のOISHI GYMに拠点を移し、RISEで上を目指している福岡出身のプロキックボクサー、荒尾彰選手。小中では極真空手、高校では野球に打ち込み、大学でキックボクシングと出会った。

始めたきっかけには、大学に入った時期の状況もあった。ちょうどコロナ禍で、部活動も思うように動かない時期だったという。その中で何か運動をしたいと思い、キックボクシングジムに入った。

通い始めたのは、九州の名門とされるジムだ。プロ選手も在籍していて、試合を初めて見た時に、自分もこの舞台を目指せるかもしれないと感じたという。極真空手を続けてきた経験もあり、その感覚はそのままプロを目指す方向につながっていったーー。

Aクラスまでは早かった。その先で見えたもの

競技を始めてからしばらくは、かなり早いペースで勝ち上がった。RISEのアマチュアで最上位にあたるAクラスまで、大きくつまずくことなく進んだという。

「トントン拍子で行けた」という言葉どおり、ここまでは順調だった。

ただ、Aクラスまで来ると相手も変わる。集まるのは、ほぼ全員がプロを目指している選手たちだ。

連敗も経験し、そこで見直したのは攻撃だけではなかった。自分から仕掛ければ倒せる感覚があった一方で、それだけでは勝ち上がれない。

相手の攻撃を受けずに、自分の攻撃を当てること。そこを考えるようになり、練習でも課題を見つけて潰していく意識が強くなっていった。

「自分の何がダメだったのかを考え始めた」

そこからは、防御も含めて見直すようになったという。

プロデビューで見た景色

RISEでは、Aクラスで勝ち上がった先に査定戦がある。そこで見られるのは勝敗だけではない。勝ち方や内容も含めて評価され、そのうえでプロとしてやっていけるかどうかが判断される。

つまり、ただ勝てばそのままプロになれるわけではなかった。

19歳で競技を始め、プロデビューは21歳。Aクラスまで進み、連敗も経験し、査定戦を経て、ようやくプロの舞台に上がった。競技を始めてから約2年でそこまでたどり着いたことになる。

プロデビューは大学3年の時だった。大学の友人やジム関係者など、応援に来てくれる人がいる中での試合は、アマチュアとは少し違っていたという。

勝つことだけでなく、どれだけ会場を盛り上げられるか、どれだけ面白い試合ができるかも意識するようになった。

そして、ヘッドギアや足の防具があるアマチュアとは違い、プロではそれがなくなる。グローブも薄くなる。「もっと覚悟持ってやらないとな」と思ったという言葉には、その違いがそのまま出ている。

そのデビュー戦は2ラウンドKO勝ちだった。倒した瞬間は周りの音もほとんど入ってこなかったが、ゴングが鳴ったあとに歓声が一気に聞こえてきたという。自分の試合でここまで会場が沸くのか。その感覚は強く残っている。

地元・福岡を離れて名古屋を選んだ理由

大学卒業後は地元福岡の銀行に入った。仕事と競技は分けて考えたいという意識があり、社会に出ることも必要だと考えていたという。

銀行で学べることもあるし、営業の仕事を通じて競技以外の経験も積める。働きながら競技を続ける形を選んだのは、そうした考えからだった。

大きな転機になったのは、社会人2年目の名古屋への出向だった。提携先の証券会社に1年間出向することになり、その時に名古屋でジムを探して出会ったのがOISHI GYMだった。

世界チャンピオンや各団体の王者が集まる、全国でも名の知られたジム。最初は1年だけ練習して、福岡に戻る予定だったという。

その予定を変えたのは、名古屋で見た環境だった。RISEでチャンピオンを目指すなら、この場所で続けた方がいい。そう考えるようになった。

福岡に戻る選択もあったが、より上を目指すなら、いまの環境に残る方がいい。その判断で、銀行を辞めて名古屋に移った。

「ここならやっていけるし、自分の決めた目標にも届くだろうって思って決断できました」

これまで自信を持っていた技術が、そのままでは通らない場面も多いという。うまくいかない日もある。それでも、足りないものを探しながら練習を続けている。

ベルトを目指す、その先にあるもの

試合を見る時にどこに注目してほしいかを聞くと、返ってきたのはパンチだった。

極真空手の経験があるので蹴りの印象を持たれやすいが、「蹴り技よりもパンチの方が得意」と話す。パンチの強さや速さには自信があるという。

そこには野球の経験もつながっているようだ。体重移動や力の伝え方、全身を連動させる感覚は、野球と格闘技で似ている部分があるという。

空手で育った蹴りがあり、野球で身につけた感覚がパンチにも生きている。蹴りだけでなく、パンチもある。多彩な選手として見てほしいという言葉は、そのまま今のスタイルを表している。

目標は、RISEのチャンピオンになることだ。ベルトを取ることだけで終わりではなく、「ベルト取っても倒し続ける選手でいたい」と話す。まずはランキング入り。そのためには勝ち続けるしかないし、限られた試合数の中で内容も見せていく必要がある。

格闘技は年間に何度も試合ができる競技ではない。一般的には年3〜4試合ほどで、一戦ごとの意味も大きくなる。


名古屋に移って最初の試合は5月末。その先にある大きな目標を見据えながら、まずは目の前の一戦に向けて準備を続けている。


プロフィール

荒尾彰(あらお・しょう)

福岡出身のプロキックボクサー。小中では極真空手、高校では野球に打ち込み、大学でキックボクシングを始めた。19歳で競技を始め、21歳でプロデビュー。現在は名古屋のOISHI GYMに拠点を移し、RISEで上を目指している。極真空手で培った蹴りに加え、パンチの強さと速さも武器。SNSでの発信にも取り組んでいる。

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