父も伯父も、兄弟も、みんなアメリカンフットボールの選手だった。そんな姫子さんにとってアメフトはずっと「家族の競技」だったが、この数年でその見え方が大きく変わったという。Xリーグアンバサダーとして関わる中で見えてきた競技の魅力と、これからについて聞いた。
アメフト一家に育ち自分がアンバサダーに
――現在、XリーグのアンバサダーとしてアメフトのPR活動をされていますが、そもそもアメフトはいつ頃から身近な競技だったんですか。
「父も兄弟もみんな選手だったんです。でも最初は全然ルールもわからなくて、『アイシールド21』で覚えたぐらいで。しかも家族がクォーターバックとかレシーバーとか、わかりやすいポジションだったので、そこしか見ていませんでした」
※クォーターバック(QB) 攻撃の司令塔として、パスやランでプレーを選択し、攻撃全体を動かすポジション。
※レシーバー(WR)クォーターバックからのパスを受け、前進や得点につなげるポジション。
――そこからアンバサダーになったきっかけは何だったのでしょうか。
「2028年のロサンゼルス五輪でフラッグフットボールが新競技になると知って、そこに行きたいと思ったんです。伯父との動画を投稿したら80万回くらい再生されて、アメフト協会の方に見つけていただいて、お声がけいただきました」
※伯父・松岡秀樹氏は、日本大学フェニックス、レナウンで活躍し、ともにライスボウル優勝を経験。学生・社会人の両方でMVPにあたるポール・ラッシュ杯を獲得した伝説的QB。
――就任からもう3年目になりますね。活動の中身も変わってきましたか。
「1年目はアンバサダーとして活動することが中心でしたが、2年目以降はどうすればアメフトが盛り上がるかを協会の方と一緒に考えるようになりました。企画も担うようになって、今年で3年目です。
アンバサダーとして各会場を回りながら、初心者向けにルールを説明したり、今のはこういうプレーですよと伝えたりする活動をしつつ、自分でも企画を出せるようになってきました。初心者向けのフィールドツアーは結構ご好評いただいて。
新規のファンの方だったり、自分のフォロワーさんたちも来てくれるような形にできました。ただ自分が直接出向く形なので、開催できる回数にはまだ限りがあって、そこは課題だなと思っています」

「なんで活躍しないの」が言えなくなった日
――2年間関わってきた中で、アメフトの見え方自体も変わってきた部分はありますか。
「かなり変わりました。昔は家族が出ているところしか見ていなかったんですが、今はラインの選手がブロックしているからあのプレーが通ったんだ、とか、細かいところにも目が向くようになりました。
家族がオフェンス側の選手だったので、ディフェンスの時間は正直スマホを見てたりもして。でも今はオフェンスもディフェンスも関係なく、両チームちゃんと見られるようになりました」
※ラインの選手 攻撃の前線で相手の守備を防ぎ、クォーターバックやボールを持つ選手を守る役割を担う選手たち。
――具体的に、何か変わった瞬間がありましたか。
「弟がボールを取らなかった時に、昔は『なんで活躍しないの』って思っていたんですよ。でも今は、取らないことにも役割があるってわかる。おとりになったり、スペースを開けたり。
ボールを持っている人だけじゃない役割が見えるようになったのは、自分の中ではかなり大きかったです」
――見方が大きく変わったんですね。
「本当にそうです。どっちのチームにも、この選手すごいな、この人もっと目立ってほしいな、って思えるようになりました。試合展開がヒリヒリしてくる感覚も楽しめるようになって、見ていて飽きないという感覚も、そこから来ていると思います」

――姫子さん自身は、アメフトのどこに魅力を感じていますか。
「私、他のスポーツは見るよりやる方が好きなんですけど、アメフトだけは見る方が好きなんです。自分が絶対にできないと思うスポーツというか。
選手だけで60人くらいいて、スタッフ含めたら100人規模で1チームが動いている。本当にいろんな人がいろんな知恵を集めてやっているスポーツで、そこにすごく尊敬があります。サイドラインで見ていると防具がぶつかる音もして、ああいう迫力はかっこいいなと思います」
――選手たちも、他のスポーツとは少し違う人たちが集まっている印象がありますよね。
「Xリーグの選手の多くは、仕事をしながらアメフトをやっているんですよね。しかも名門大学出身の方が多くて、エリートと呼ばれる職場に就職しながら土日に試合をしています。
スポーツ選手のセカンドキャリア問題って聞くじゃないですか。でもアメフト選手にはそれがほとんどない。体も鍛えていて、頭も良くて、仕事もちゃんとやっている。そういう人たちが集まっているスポーツなんだというところも、もっと伝えていきたいなと思っています」
――そんな競技なのに、なかなか広まっていないというのはもったいないですよね。初めて見る人には、どこから伝えるといいと思いますか。
「基本的なところだけでいいと思っています。相手陣地に入ったらタッチダウンで6点、キックを入れたら3点。相手陣地に進むためには、投げるか走るか蹴るかの3種類、そのくらいわかれば十分で。反則や戦術は、見ながら覚えていけばいい。
個人的には野球の方がルールは複雑だと思っているんですが、野球はみんな知っている。アメフトは難しいというより、まだ十分に知られていないだけだと思っています」
――その「知られていない」という感覚は、いつ頃から持っていましたか。
「高校生の時からですね。私の高校のアメフト部も強かったんですが、友達に応援行こうって声をかけても、ルールわかんないからいいやってなっちゃって。
「学年で4人しかいない野球部にはチアも総出でみんなで応援行こうってなるのに、関東大会に出ているアメフト部のスタンドには誰もいない。チア部もいるのに。あの時からずっと、もったいないなと思ってきました。
アメフトが日本で一番盛り上がっていたのって父や伯父の世代で、当時は地上波でも放送されていて2,3万人が会場に入っていたって聞いています。それが今はだいぶ変わってしまって。だからこそ、もう一度盛り上げていきたいという気持ちがあります」

――今年からXリーグも新体制になって、その流れを活かせる機会でもありますね。
「Xリーグプレミアとして5月3日に東京ドームで開幕するんですよ。開幕節5試合は全て無料で見られるようになるので、今まで見たことがない人にもぜひ来てほしいですし、そういうきっかけをどんどん作っていきたいです」
※2026年5月3日、東京ドームにてXリーグプレミア開幕。第1試合はオービックシーガルズ対パナソニック インパルス(12:00キックオフ)、第2試合はIBM BIG BLUE対富士フイルム海老名Minerva AFC(16:00キックオフ)。開幕戦は全試合無料で観戦可能。
――その先には、ロサンゼルス五輪という目標もありますね。
「英語が喋れないと話にならないので、留学も考えています。地上波で出た時に『誰だこいつ』とならないように、知名度もちゃんと作っていきたいですし、まず海外に出てみたいという気持ちもあります」
――今の姫子さんにとって、アメフトはどんな存在ですか。
「昔から近くにあった競技ですけど、今は自分が広げていきたい競技になった感じがします。ただ好きで見ているだけじゃなくて、自分がどう関われるか、どう伝えられるかを考えるようになりました。ロサンゼルス五輪に向けて、そこに自分がいられるようにちゃんと準備していきたいです」

プロフィール
姫子
モデル・理学療法士・スポーツタレント。Xリーグアンバサダーとしてアメリカンフットボールの魅力発信に取り組むほか、さまざまなスポーツの現場で活動。
Instagram:https://www.instagram.com/himeko_matsu_/



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