【クラブの潤滑油になる指導者を目指してー心理学から育成年代を支える新たな働き方ー】

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本田圭佑選手の発信により、サッカーの指導者に関する議論が話題になった。
一方で、心のケアを行う”メンタルコーチ”という職業をご存知だろうか。こちらも資格は存在し、実際に活動する指導者もいるが、普通にサッカーをしている者が出会うことは少ない。高校3年間で選手権を目指し、勝利を求める環境にいる高校生アスリート。そればかりを追い求めるために、燃え尽き、高校で競技を引退するという風潮もある。今回はメンタルという観点からアプローチする1人の学生に取材を行った。


指導者としてメンタルを支えていく


ー実は二回目の取材ですね。

前回から考え方がアップデートされ、より自分のやりたいことが何かわかってきました。そのためにもう一度自分のこと、思っていることを記事に残したいと思いました。

前回の記事はこちら(プロフィールなどこちらから確認できます)

ー前回話したときは指導者✕キャリアというイメージでした。

一年前にスペインへ自分探しのために行きました。(当時は自分のやりたいことがわからなかったこともあり)キャリア教育ってどうなってるの?という疑問を持っていました。

ー前回からどのように変わりましたか?

アトレティコ・マドリードの現場を見て、指導について知って、自分がサッカーを上手くさせるより、メンタルの方から支えることの方が自分のやりたいことではないかと思うようになりました。

ちょうど指導の道に動き始めていたところ、footballistaさんのイタリアのメンタルコーチに関する記事に出会いました。スペインでの原体験に加えて、この記事を読んだことによって、自分の思考が変わりました。

ーなぜメンタル面からアプローチしたいと思いましたか?

人と話すことは好きなことですし、もともと人にフォーカスした仕事をしたいと思いました。特に、スポーツをしていて夢や目標を持った人が、自分自身に限界を感じてほしくない。諦めてほしくないと思っています。1人の人生に関係することなので、もちろんリスクもあるけど、やりがいのほうが大きいです。


勝利至上主義と精神論に走りがちな現場


ー現状をどう思っている?

例えば、中学や高校では、一直線に勝利に向かって本番に向かいます。結果を出すことにフォーカスしすぎて、無理やり追い込まれ、ずっと気力を振り絞って前に進む。目的が結果だけになる。そのため自分の成長に目が向かないし、ただ勝てばいいという思考になります。

ー確かに高校生まで行くと特にどの部活も勝つことばかり。楽しくサッカーしたい人だったり、別の目的を持った人も少なくないので、向き合い方は大事かなと思います。

特に自分をコントロールすることが大事だと思います。それは試合中でも普段でも同じです。意識や生活習慣、トレーニング、目標。自分をコントロールすることによって、成長できると思います。そこから、勝つ喜びや、自分の成長を感じて、競技と向き合うことができるのではないかと考えています。

ーどのように自身ではサッカーと向き合っていましたか?

自分を表現するものがサッカーでした。サッカーをすることによって、自分が思っていることを伝えていたと思います。

ーいつそのような意味に気づきましたか?

高校3年生のときです。それまでサッカーを何で続けてきたのかずっと考えていました。その答えが自己表現ということです。極端に言うと、最悪勝てなくてもいい、選手権には別に行かなくてもいいと思っていました。もちろん、結果出すことは大事で、競争する限り、勝ちたいのは確かですし、負けるのは悔しい。それでも、自分がいいプレーできたかどうか、表現できたかどうかが重要であったことに気づきました。

ーそのように気づけない学生も多いと思います。特に自分をコントロールをすることも難しいのかと。

心理学が普及していないためにメンタルとはという理論も目にする機会がありませんよね。それが、海外では高校から学べますが、日本では大学で専攻しないと学べない学問で、そもそも触れる機会が海外と日本では違います。いわゆる精神論、根性論といった、指導者の主観に基づいて指導されている現場も多く、科学的、学問的な知識がないことが原因で問題が起きているはずです。

ーそれでもメンタルに関しては注目されるようになったと思います。

最近では、大坂なおみ選手がコーチングを用いて、精神面を鍛えたことで、優勝に繋がったと話していました。第一線で活躍する選手の結果が出ることで注目されてきたと考えています。


常に試行錯誤を繰り返す


ー実際に現場ではどのようなことがことがありますか?

プレーをする人は常に心理的に試されています。特に、試合中のミスの切り替えができない点は多くの選手に共通しています。チームメイトや指導者を気にしたり、自分の理想のプレーからギャップを感じてしまったり。それからミスした自分にネガティブな感情持って、余計に悪循環に陥ります。

ーどうすれば良いのでしょう?

他人からどう思われるかなど、外的要因は自分でコントロールできないことを気づかせることや、ミスをしてもマイナス思考に陥らないように肯定的、プラスになるようにアプローチしています。

ーどこで実践しているのですか?

自分のクラブでは、メンタル面のアドバイスをしています。結果として、自分をコントロールできるように変わったと言ってくれました。

ー具体的にどのようなことをしたのですか?

春はリーグ戦で結果が芳しくなくて、そのときにチームのキャプテンは、試合の状況が良くないと怒りがちでした。そこで、怒ることでのメリット、デメリットや、自分をコントロールする方法を伝えました。不安を抱いたり、緊張してる選手に怒っても意味はありません。そして、試合中に状況が悪くても、自身の感情をコントロールしながら、タスクベースのことを周囲に伝えること。今、何をしなければいけないか伝えることが大事であるとアドバイスしました。

ーどう変わりましたか?

前期のリーグ戦では失点したら顔が下がり、試合中の雰囲気は最悪でした。それでも、自分がキャプテン含めて、チーム全体に声をかけて、コーチングして簡単に折れないチームになりました。自分のできることは心理的なアプローチ。今後はチームを勝たせて挙げられるまでにしたいと思っています。

ー具体的に今はどう勉強していますか?

本で学び、現場でアウトプット(関東一部大学リーグ、都リーグ一部の選手、チームに対して)しています。主観的な判断になってしまいますが、選手に話してリサーチ。常に会話をしながら、変化を見ています。毎回毎回、試行錯誤という感じです


クラブの潤滑油として

ー将来どのようなことをしたいと考えていますか?

クラブでの潤滑油となれる存在になりたいと思っています。心理学に特化して、プレイヤーとはコーチング、カウンセリングといったアプローチをしていきたいです。もちろんサッカー指導者としてのライセンスも取得していきます。
そして、クラブの運営層、指導者、保護者との間に立てるようになりたいです。これまでにない、サッカー指導者として新しい働き方を創っていきたいと考えています。

ー心理学を通してどのようなことを達成したいですか?

育成年代からメンタルトレーニングをすれば、燃え尽きてしまって、節目の時期にやめようという風潮がなくなると思います。楽しいと思って始めたサッカーが、結果を求めるようになって、競技志向に変わる。結果を出すために日々懸命に気力を出しながらトレーニング。

それを繰り返すことによって、精神的に疲れてしまいます。最終的には結果次第で、気力がなくなってスポーツを辞めてしまいます。また、”頑張っても意味がなかった”と感じてしまい、最悪ドロップアウトに繋がると思います。スタートからゴールまでの心の使い方が間違っていると思います。学生世代のこのような問題を解決したいと思っています。

ーどのような考えを持ってほしいですか?

そもそも何でスポーツやってるのか。と、スポーツをする意味を持ってほしいです。負けたからやめる。マイナスに感じる認識を変えていきたいです。

ースポーツの価値とは何でしょう?

スポーツってもっといろんなことを教えてもらえる、成長できると考えています。それが、結果ばかり追い求めると、それだけしか見えてこない。目標に向かって努力し、その過程で人間的な成長を遂げます。それはこれからも別のステージに進めば起こりうることです。スポーツはそれが小さいところから経験できる。いかに自分にフォーカスして、目を向けて自分で自分をコントロールできるか。スポーツを通じて人間的成長をしてほしいです。

ー現役でプレーする学生アスリートにメッセージをお願いします。

過去の失敗や、未来の成功にとらわれず今に向き合うこと。今ココで何ができるのかを意識することが大事です。現役プレイヤーの選手は、長い競技歴、過去から理想の自分を描いてたりするけど、今の自分とかけ離れたところを意識しすぎると、目標達成したい気持ちが強すぎて不安になったり、過去の栄光から、高いモチベーションを維持できなくなったりします。今の自分を見つめること、今を生きることが現役のプレイヤーに必要だと思います。

【佐野彰】

静岡県出身。尚美学園大学4年。プレイヤーの可能性を最大化する人材になることをvisionに日々活動中。
Twitter:@Kira_bluepride
所属クラブ:https://ar-fc.net

インタビュー/記事執筆

【藤原】

Vektor創設/94世代/平昌五輪視察
Twitter:https://twitter.com/k0sk_vektor