スポーツにおける女性参加促進への取り組み。男女混合スポーツ「ベースボール5」は解決の鍵になるか?

ナイキとローレウス財団は、2024 年 10 月 16 日〜20 日に「女の子のためにスポーツを変えるウィーク – COACH THE DREAM – 」を開催。世界的テニスプレーヤーの大坂なおみ選手らが、本企画を通じて女の子のスポーツ課題解決に向けてメッセージ発信された。

10月18日に開催された「女の子のためにスポーツを変えるウィーク -COACH THE DREAM-」の東京サミットで見えてきた、スポーツ界における女性の参加促進に対する課題と今後の解決策とは?

本メディアの筆者は、これまで「マイナー」と言われるスポーツの現場に数多く触れてきた。特に、参加者が集まりにくい環境での普及活動においては、さまざまな課題が浮き彫りになっている。その中でも、男性プレーヤーは比較的集まりやすい一方で、女性プレーヤーの獲得に苦戦するケースが目立つ。

国内外には多様なスポーツ環境があるが、筆者自身も現場で普及活動や指導を行う立場として、この問題を軽視することはできない。

スポーツに携わる一人の実践者として、そして情報を発信するメディアの役割を担う者として、こうした課題に正面から向き合い、解決に向けた取り組みを続けていく必要があると考えている。

女の子のスポーツ参加を阻む障壁として、フィットするスポーツ環境がないこと、からだと心の変化があること、ロールモデルや指導者の存在が少ないことなど、様々な課題があがっていた。

どのようにして参加の障壁をなくすことができるのか?

「ワクワクが最強!」

東京サミットのパネルディスカッションでは、読売ジャイアンツの田中美羽選手が、自身の経験を例に挙げた。

野球を始めたきっかけは「ピンクのユニフォーム作る」とコーチに誘われたそうだ。

お兄さんの付き添いで来ていたので、スポーツに馴染みのある環境であったが、その状態から一歩踏み出す・後押しするきっかけとして、重要な視点である。

また、パリオリンピック女子バスケットボール日本代表ヘッドコーチを務めた恩塚亨氏の語った「ワクワクが最強」というキーワードは、特にこのディスカッションで印象に残っていた。

スポーツのあるべき姿ばかりを追うのではなく「敷居やハードルを下げる」こと。そして、やらされるスポーツではなく、自分からやりたくなるスポーツにすること。

「スポーツは楽しいものである」が、それは既にやっている人たちだけの感覚かもしれない。まだやってない人には魅力が伝わりづらい部分もある。

そのため、ワクワクしてもらうことは大事な要素である。そのきっかけは、スポーツから入る必要もないはずだ。

「7連覇してもメディアに取り上げられない」

もう一点、課題として話題となったのがメディアでの露出について。女性より男性の報道が多い傾向がある。

女子野球日本代表選手としてプレーしてきた田中選手が、囲み取材の中でも「どうすればもっと取り上げられるか」と記者たちに逆質問のような形で答えていた。

そもそも、男性スポーツが話題になりやすい背景には、メディアの運営方針や視聴者の関心が大きく影響している。

メディアとして、どれだけ読まれるか、どれだけ反響を生むかを目標にするのは自然なことだが、その結果、数字や話題性に直結しにくい内容は後回しにされる傾向がある。数字が取れるとなれば、些細な話題でも瞬間的に更新されていく。

そして、女性スポーツの場合、スポーツそのものよりも、外見やライフスタイルなどスポーツ以外の側面で注目されることが多いとディスカッションでは話題に上がった。競技の魅力や取り組みそのものが埋もれてしまうケースが少なくない。

実際、本メディアではニッチな分野を扱ってきたが、そのきっかけはメディア露出が少ないと嘆いていたいわゆる”マイナースポーツ”のアスリートからの言葉がきっかけだった。

決して多くの閲覧数が得られる市場ではない。しかし、取り上げてほしい人がいて、情報を必要としている人も実際にいることが証明されている。

メディアの影響によって劇的に環境が変わるわけではないが、届けたい人にしっかりと伝わる形で発信することが、長期的にはスポーツ文化の発展や、より多くの人々を引き込む鍵になるはずだ。

また、田中美羽選手は野球だけでなく、ベースボール5にも取り組んでいる。近年注目されており、メディアでも徐々に取り上げられる機会を目にしてきた。野球と比べると報道量はわずかなものであるが、新たな切り口としてメディアが注目しているのも事実だ。

そんなベースボール5の特徴や、新たなスポーツによる「敷居やハードルを下げた」、「ワクワクが最強」と言えるような事例があるのか探っていきたい。

ベースボール5は女性にとって始めやすいスポーツ?

ベースボール5は、男女混合スポーツとして注目を集めている。その特徴は「室内での実施が可能」であり、「特別な用具(バット・グローブ)不要」な点、野球に比べてシンプルなルールである。

これらの特徴により、従来の野球と比べて参加障壁が低く、女性にとっても始めやすいスポーツとも言えそうである。

しかし、実際はどうなのだろうか。実際にベースボール5をしている人はどう感じているのか?

今回の「女の子のためにスポーツを変えるウィーク – COACH THE DREAM – 」東京サミットと別の機会に、実際に現役でプレーヤーする方々に話を聞いたみた。

大阪さんはベースボール5チームジャンク5でプレーする女性プレーヤーである。

ベースボール5を始める前に「子どもの頃からやっていたスポーツではなく、大人になってからでも本気で打ち込めるスポーツを探していた」と言う前提があったそうだ。その際「たまたまyoutubeに上がってきて楽しそうだった」というのがきっかけだった。

では、ベースボール5は取り組みやすいと思えるものだったのか?

「手軽に始められるという点では、取り組みやすいと思う」という一方で、「男女混合であることや競技思考の強いチームだったりすると少し抵抗がある人もいるのかな?とも思う」という指摘があった。

現状の環境について聞くと「他チームを見ても深刻な女子不足なので、まだまだ整っていない」と感じていた。今後の状況を変えるためにもメディアで取り上げてもらうのが一番影響力がありそうだと

また、この点については他チーム「フリークス」のプレーヤーも「圧倒的に女性プレーヤーの少なさを感じている」と答えていた。特に「現状、女性メンバー0なので男性しかいないところに入りにくいと思う」と、課題を口にしている。

0か1かによる違いは大きいだろう。そして、その女性プレーヤーがいないことで、大会に出場したくてもルール上参加できないという状況でもあった。

「女性プレーヤーに限らず、練習の参加人数が少ない」ことが課題にも挙げており、声がけや言葉遣いなども含んだ「誰もが楽しめる雰囲気や環境作り」の必要性や、「エンジョイを目的とした大会の開催や運営」に取り組んでいきたいと答えていた。

新たなスポーツとして、ハードル低く始めやすいのではないか。とイメージを持っていた部分もあったが、実際はまだまだ苦戦している様子も伺えた。

しかし、「youtubeに上がってきて楽しそうだった」というワクワク感からベースボール5を始めた大阪さんの例や、フリークスでの「誰もが楽しめる雰囲気や環境作り」を工夫したいと語っていた点など、ポジティブな側面も非常に見えた点である。

女性プレーヤーとスポーツの未来

様々なアプローチがある中で、本メディアとしては、「女性スポーツが取り上げられない」という課題に対して、改めて取り組むべき点であると感じている。

その中で、現在のスポーツ環境や取り組みをするアスリートなど、想いの部分をより伝えていきたい。ロールモデルとして認知されることが女性のスポーツの参加を促し、男女ともにより良いスポーツ環境を整えることにつながるはずである。

「ワクワクさせる」ような切り口から、スポーツやその人の魅力を伝えていけるよう、今後も注目していただきたい。

 

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【取材協力】
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