初戦で負傷した仲間を支え、全試合フルタイム出場──鍼灸師・堀内貴志のYOU.FO世界大会

インタビュー

中国で開催されたYOU.FOワールドカップ。その初戦で、筆者(藤原)は右ハムストリングを負傷した。

歩くことも難しくなり、「この大会では、もうプレーできない」と感じていた夜、身体を見てくれたのが同じチームの堀内貴志選手だった。

堀内選手は日本代表選手として世界大会に出場する一方、普段は鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師として、身体の痛みや動きに悩む人への施術を行っている。大会では仲間の身体を支えながら、自らもベスト32の試合で勝利を決めるゴールデンゴールを奪った。

選手として世界大会で何を感じたのか。仲間の怪我にどう向き合い、普段はどのような考えで身体を見ているのか。中国大会を振り返りながら話を聞いた。

初戦で負傷。この大会ではもう動けないと思った

藤原: 今回のワールドカップでは、僕が初戦で右ハムストリングを痛めました。

最初に違和感が出た段階では、次の試合も動きを抑えれば出られると思っていました。ただ、その後のカウンターで走り切ったときに「バチッ」と痛みがきて。これは終わったなと思いました。

YOU.FOは3人制で、僕たちのチームは4人で戦っていました。1人が離脱すると、残る3人は交代ができません。自分が出られないこと以上に、ここまで一緒に準備してきた仲間へ大きな負担をかけてしまうことがつらかったです。

怪我をした直後は大会のメディカルスタッフが対応してくれました。堀内選手は、今大会の医療体制をどのように見ていましたか?

堀内: 怪我をした直後には、メディカルスタッフが来て対応してくれました。打撲や肉離れなどへの応急処置としては、必要な対応が行われていたと思います。

大会中には、膝を痛めるなどして、病院での対応が必要になった選手もいました。会場でできることには限界があります。その場で対応できない怪我が起きた場合に、病院への搬送などをどれだけスムーズに行えるかも大切です。

すべての対応を見ていたわけではありませんが、僕が見た範囲では、最低限必要な体制は用意されていたと感じました。

藤原: 大会のメディカルスタッフに応急処置をしてもらった後、夜には堀内選手にも身体を見てもらいました。

その頃には普通に歩くことも難しくなっていて、痛みだけでなく、試合に戻れるか分からない不安も大きかったです。肉離れであれば、休むのが普通です。この大会はここで終わりだと思っていました。

夜に鍼を打ってもらい、翌朝にはテーピングでサポートしてもらいました。

堀内選手は、大会へ帯同した公式トレーナーではありません。僕たちと同じように、選手として勝つために中国へ来ていました。その中で身体を見てもらえたことは、本当に大きかったです。

堀内: あの状態から、よく動けたと思います。

藤原: 最終日は、最初の数分しかまともには動けませんでした。それでも、怪我をした日の夜に想像していた状態を考えると、もう一度コートに立てたこと自体が大きかったです。本当に感謝しています。

もちろん、鍼やテーピングを受けたから怪我が治ったという話ではありません。試合に出た判断が正しかったと言いたいわけでもありません。

ただ、身体の状態を相談できる相手が近くにいたことで、自分の感覚だけでその後を決めずに済みました。

堀内: 今回は、ほかの日本の選手にも鍼をしました。

「試合中に痛みが出なかった」「やってもらって助かった」と言ってもらえたことは、自分としても嬉しかったです。チームや仲間のために、自分の仕事を生かせたと感じました。

練習してきた形で決めたゴールデンゴール

藤原: 堀内選手は身体を見られる専門家ではありますが、日本代表選手です。今大会には、どのような思いで臨んでいましたか?

堀内:日本で開催された前回のワールドカップでチームを組み、大会へ出ることを意識しながら本格的に取り組むようになりました。

僕は以前ハンドボールをしていたのですが、YOU.FOにはハンドボールと似ている動きや、戦術的な要素があります。

得点することは簡単ではありませんが、その分、得点できたときは嬉しい。得点までの過程や、ディフェンスがうまくできたときの感覚も楽しいです。スポーツの基本的な面白さを、改めて感じられる競技だと思います。

今回のワールドカップでは、勝負にもこだわり、世界一や日本代表というものを意識しながら挑戦してみたいという気持ちがありました。

2025年東京大会時の堀内選手

藤原: 去年の日本大会と、今回の中国大会では、規模も雰囲気もかなり違いましたよね。

堀内: 中国大会は設備もしっかりしていて、世界大会らしい規模を感じました。

日本で開催された大会は知っている顔も多く、家から会場へ通う人もいました。日常の延長に大会があるような感覚もあったと思います。

今回は海外へ移動し、日本のほかのチームや海外の選手たちと同じ場所に滞在しながら参加しました。これまでにない経験で新鮮でしたし、「世界大会はこういう雰囲気なのか」と感じることができました。

藤原: 選手として、今大会をどのように振り返っていますか?

堀内: 前回よりも個人としての練習量が増え、チームでもYOU.FOに取り組む時間を多く作れました。その点は楽しかったです。

一方で、チームとして準備できる期間は長くありませんでした。例えば、中国のチームが積極的にマンツーマンで守ってくることへの対応など、事前に十分練習できなかった部分もあります。

それでも、練習してきたコンビネーションから得点できた場面はありました。個人的には、準備してきたものを大会で出せたと思っています。

藤原: 今大会で、特に印象に残っている試合やプレーはありますか?

堀内: ベスト32の試合で、ゴールデンゴールを決めた場面です。

練習では、ゴールエリアの外側にスペースを作り、遠い位置でパスを受ける動きを繰り返していました。試合でも、そのスペースを空けてもらい、タイミングを合わせて移動してパスを受けることができました。

激しいフェイントをかけて相手を振り切ったわけではありません。一瞬のタイミングを作り、味方からパスを出してもらった形です。

勝利を決められたことに加えて、練習してきた形を大事な場面で出せたことが一番嬉しかったです。

藤原: 僕は怪我をして激しく動けなかったので、前で相手を引きつける役割ができればと思っていました。ずっとゴール前にいたため、後ろでどのような駆け引きが起きていたのかは、あまり見えていなかったんです。

僕が前に入り、空いたスペースを堀内選手が使い、そこへパスが通った。チームで練習していた形が、勝負を決める場面で出たんですね。

堀内: そうですね。

激しく動いて相手を振り切ったわけではなく、スペースと一瞬のタイミングを使えたプレーでした。勝利を決めたことと、やってきたことを出せたこと。その両方があったので、最も印象に残っています。

日本代表チーム「HO-OH」として出場。ベスト16に進出

マイナースポーツと専属トレーナーの課題

藤原: YOU.FOはノンコンタクトの競技として紹介されていますが、今回のような肉離れや捻挫など、接触がなくても怪我は起こりますよね。

堀内: 接触の少ない競技であっても、膝をひねる、肉離れを起こす、捻挫をするといった怪我はあります。

接触がなくても、自分の動きによって怪我をする可能性はあります。ノンコンタクトだから、怪我をしないわけではありません。

また、リングを取りにいく場面や、相手のプレーを防ぐ場面では、どうしても選手同士が近づきます。競技性が高くなるほど、接触が起こる場面も出てくると思います。

藤原: マイナースポーツでは、選手自身が費用を負担して海外大会に参加することも多く、チームごとに専属トレーナーを帯同させるのは簡単ではありません。YOU.FOも同じです。

今回は、たまたま堀内選手が同じチームにいたことで、僕だけでなく複数の選手が助けられました。ただ、僕自身も最初は、どこまでお願いしていいのか迷いました。同じ大会に選手として出ていますし、自分の試合へ向けた準備や休養も必要ですよね。

堀内: そうですね。専門的に身体を見られる人がいるに越したことはありません。

ただ、資格を持つ人がチームの中にいたとしても、単なるチームメイトという立場では、ほかの選手も施術やケアを頼みにくい部分があると思います。

今回のように、参加者の中に本業として身体を見ている人がいる場合は、「選手兼トレーナー」のような役割をあらかじめ作っておく方法もあるかもしれません。

役割が明確であれば、周りも相談しやすくなります。

今回は仕事として参加したわけではなく、できる範囲で行った形です。マイナースポーツには予算の限界もありますが、チームの中に専門的な仕事をしている人がいれば、その力を生かせる形は考えられると思います。

もちろん、本来は条件を整えて、専門スタッフに依頼できることが一番です。

藤原: 今回は、堀内選手の専門性と厚意に助けられた部分が大きかったと思います。

全チームがすぐに専門スタッフを帯同できるわけではありません。それでも、参加メンバーの中に身体について相談できる人がいるのか、その人にどのような役割をお願いするのかを事前に考えておくだけでも違いますよね。

堀内: そう思います。

専門的な人がいれば、ただメンバーとして参加するだけでなく、役割を作ることで相談しやすくなると思います。

競技の現場に近い場所で、身体を支える

藤原: ここからは、堀内選手の仕事について聞かせてください。そもそも、なぜ身体を見る仕事を選んだのでしょうか?

堀内: 小さい頃からスポーツが好きで、スポーツに関わる仕事がしたいと思っていました。

本当は自分が選手として続けられることが一番でしたが、自分の能力では限界もあると感じていました。

それなら、競技の現場に近い場所でトレーナーのような仕事ができたらいいと考え、大学ではスポーツ系の学部に進みました。

身体の仕組みを学んでいくと、普段、自分が何気なく行っている動きがどのように成り立っているのか分かってきます。パズルを解くような感覚があり、次第に面白さを感じるようになりました。

大学時代には、プロ野球の現場でトレーナーをしているゼミのOBを見学する機会もありました。その際に、鍼などの技術があると現場で役に立つと聞いたことも、資格を取るきっかけの一つです。

スポーツトレーナーだけで生活していくことの難しさも考え、国家資格を持つことが現実的な選択にもなると思いました。

ただ、実際に施術をして身体に変化が起こることは面白いです。仕方なくこの仕事をしている感覚はありません。

藤原: これまで、どのような人の身体を見てきたのでしょうか?

堀内: 少し前までは整形外科のクリニックで働いていて、一般の患者さんを見ることが中心でした。

働き始めた頃には、学生のスポーツチームにも関わっていました。一般の方と、競技レベルの高い環境でスポーツをする人の両方を見てきた形です。

藤原: 現在は、どのような施術を行っていますか?

堀内: 鍼灸とマッサージの資格を持っていて、現在は出張形式で鍼やマッサージの施術をしています。

怪我や疲労のケアはもちろんですが、身体の使い方まで見ることを大切にしています。

例えば、筋肉が硬くなり、動きを邪魔している場合があります。その部分を調整することで、走る、投げる、蹴るといった動作が変わることがあります。

痛い部分だけに施術をして終わるのではなく、「どうすれば、その人の動きが良くなるのか」まで考えながら身体を見ています。

藤原: 施術を受けるのは、アスリートが中心ですか?

堀内: 一般の方が中心です。

趣味でランニングをしている方や、ゴルフをしていて身体を痛めた方など、日常生活の中でスポーツを楽しんでいる方もいます。

競技レベルに関係なく、運動によって出ている痛みや身体の悩みがあれば、その動作も含めて考えながらアプローチしています。

藤原: 特に、どのような悩みを抱えている人に施術を受けてほしいですか?

堀内: 同じ怪我を繰り返している人や、疲れてくるといつも同じ場所が痛くなる人には、一度、自分の身体を見つめ直してほしいと思います。

同じ怪我を繰り返す場合、自分の身体の使い方や、競技特有の動作の中に原因がある可能性があります。

アスリートだけでなく、趣味でマラソンやゴルフなどをしている人も対象です。スポーツを続ける中で、慢性的な痛みや違和感がある人には、何かしら力になれると思います。

藤原: 鍼やマッサージでは、具体的にどこまで見ていくのでしょうか?

堀内: まずは鍼やマッサージによって筋肉の硬さを緩和します。それによって、身体が軽くなったり、動きやすくなったりすることがあります。

その上で、その人の動き方を確認し、問題になっている部分を探します。

例えば、重心が後ろに寄っている、特定の動作でバランスを崩しているなど、本人が気づいていない身体の使い方が、痛みにつながっていることもあります。

鍼やマッサージで身体を動かしやすい状態にした上で、動きや身体感覚の修正まで行っていきたいと考えています。

藤原: 一般の患者さんと、競技レベルの高い選手の両方を見てきた中で、今後はどのような人を支えていきたいですか?

堀内: その間にいる人へのサポートが、あまりないと感じています。

プロ選手ではなくても、趣味としてスポーツを続けている人や、部活動に取り組んでいる学生はいます。一般の方ではあるけれど、真剣にスポーツをしていて、身体に悩みも抱えている。

そうした人たちに届く活動ができればと思っています。

世界大会で勝利を決めるゴールを奪い、同じ大会で仲間の身体も支えた堀内選手。

仕事や学業を続けながら、本気で競技に取り組む人は少なくない。一方で、プロ選手のように日常的な身体のサポートを受けられる人は限られている。

同じ場所を繰り返し痛めている。運動をすると決まった部位に違和感が出る。痛みが落ち着いても、また同じ怪我をしてしまう。

そうした悩みを抱えている人にとって、痛い場所だけでなく、自分の身体の使い方まで見直すことが、スポーツを続けるための一歩になるかもしれない。

堀内貴志選手への施術相談

堀内選手は、出張形式で鍼灸・マッサージの施術を行っています。

同じ場所を繰り返し痛める、運動をすると特定の部位に違和感が出る、疲労が蓄積すると身体を動かしにくくなるなど、身体に関する悩みを相談できます。

【活動名・屋号】テトハリactive 堀内貴志
【対応エリア】東京23区中心
【問い合わせ先】LINE公式アカウント
【Instagram】テトハリactive | 出張鍼灸マッサージ
【ホームページ】https://tetohari.com

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