ロシアで行われたビーチサッカー W杯。日本代表は史上初の決勝戦に進出し、決勝戦はロシアに2−5で敗れるも、過去最高の銀メダルを獲得した。今回が通算3回目のW杯出場となる東京ヴェルディBS所属・原口翔太郎選手に本大会を振り返ってもらいつつ、ビーチサッカーの現状や原口選手の活動について伺った。
「絶対にメダルを持って帰ろう」
ー今大会が準優勝でしたが、本大会を振り返っていただけないでしょうか。
2020年10月にチームメイトでもあるオズ選手(茂怜羅オズ)が新たに選手兼監督となって、新生オズJAPANが誕生しました。それから海外に行けず、国内合宿を繰り返して挑んだ大会です。メンタルトレーナー・フィジカルトレーナーなどと協力して「どうW杯で戦うのか?」と前に進みながら成長してきました。
本大会前は2週間前から現地で事前キャンプを行なって3試合ほど練習試合をしましたが、あまり良い結果ではなかったです。
ただ、悪い部分が出て修正できた部分もあって、(本大会の)予選に入ってパラグアイ、アメリカ戦(※①)がすごく良い流れで、内容的にはギリギリでしたが自信を持てましたね。
※①:vsパラグアイ 7-4 。vsUSA 4-3 で予選リーグで2連勝を飾った。
ー元々、日本代表はメダル獲得や優勝など当初の目標はどう設定されていたのでしょうか?
ここはいろいろありました。2020年10月に合宿が始まった時、フィジカルトレーナーの武井さんと代表組で、世界一の練習をしないと世界一になれないと話していました。
また、W杯の2ヶ月ほど前にJFA夢フィールドにピッチカリオカと言うビーチサッカーコートが完成しました。
そこに前監督のラモスさん(ラモス瑠偉)、北澤委員長(北澤豪)などが来てくれて、ラモスさんから皆に「前回悔し思いをしたし、今回はピッチも作って期待してくれているから必ずメダルを取ってきてくれ」と激励をいただきました。
そこで、みんなラモスさんやJFAのためだったり、これまで厳しい環境でビーチサッカーをつないでくれた人たちのためにも「俺たちは絶対に結果を残そう。メダルを持って帰ろう!」と話していました。
ー原口選手にとっては3回目の大会です。これまでと違った点はありますか?
毎回大会は異なるのですが、2015がベスト8で、2017が予選敗退。2019は出ておらず、今回は久しぶりでした。
コーチにはもともと選手だった田畑さんが入って、チームはよりコミュニケーションが増えて風通しが良くなりました。個人的に最後(の大会)だと思っていたので、人生最後、死ぬ気でやろうと思って臨みました。
ーコロナ禍での大会で難しかったことはありますか?
大会期間中もあまり部屋の移動ができず、選手の関わりが少なくてコミュニケーションが減りましたね。
そんな時だからこそ、練習やバス移動の時に話そうとする意識がありました。コロナで制限もあって、PCRも毎日のようにあって大変でした。
ー今大会で言えば、コロナ禍の他にルール変更があったと拝見しました。「GKがボールを4秒以上保持できなくなった」と言うことがあって、展開が早くなると見たのですが、選手としてどう感じていた部分がありましたか?
まさにその通りです。結果から言うと日本代表はルールが変わって良かったです。日本はより攻撃的な戦術でできること。そして、海外の選手はキーパーを主軸に戦術があるので、上手くボールが回せない国があったり戸惑っていました。
日本はルール変更の噂が始まる段階から練習で取り入れていたので、実際に変更があってもすんなり対応できました。
※他にもルール変更があったことを教えていただきました。
(スローインとキックインを試合中に選択できるようになったこと。コーナーキックは1m以内に置いて蹴ること)
「国歌斉唱の時に泣きそうになりました」
ー全6試合、この中で印象に残っている試合はありますか?
全試合印象に残っていますが、準決勝のセネガル戦、決勝進出を決める試合が一番印象に残っています。
ここで勝てば歴史に残るし、負けたら3位決定戦で、メダル獲得なるかならないかになるので。行きのバスも雰囲気が凄かったです。やるしかなかったけど緊張感は漂っていました。本当に勝てて歴史作れて良かったです。
ーそのセネガル戦、試合中はどんな雰囲気でしたか?
海外との試合は1つのミスが許されないので、そこはチームで意識していました。
合宿からやってきた戦術をもう一度整理して思い出して、やってきたことを信じてやろうと。それがうまくハマって、スコア的にも離したし(※②)始まってからすぐに勝てるという自信がありましたね。
(※②)vsセネガル 5-2 で勝利。
ー決勝戦に初めて進みました。その舞台は全く違う状況でしたか?
今でもいろんな人に言ってますが、決勝にいた自分がまだ信じられなくて。入場する時にトロフィーの横を通って入場するのですが、「自分いたのかな?」と。夢のような時間で、あっという間でした。
今までで一番大きな5000人ほど入るスタジアムで、全席埋まって満員の中でできたことは、「一言で幸せでした」。企業の方やサポートしてくれた方など、いろんな人の顔が浮かんで、国歌斉唱の時泣きそうになりましたね。
「海外の強豪国はプロリーグがある」
ービーチサッカーについては、サッカーやフットサルに比べると体験したり、観戦する機会が少ないと思います。
全国に数十チームある中で、スクールやクリニックを開いたりしていますが、なかなか認知されないところもあります。
ですが、今回の結果でプロサッカー選手や芸能人の方と繋がりました。Twitterでも「ビーチサッカー 面白い」とコメントをいただいて、結果を出すことが大事だなと。そしてこの結果を生かすためにも、普及をしっかりやらないといけないと思いました。
たくさんの方にビーチサッカーを体験してもらえるような取り組みをしていきたいと思っています。
ー競技自体に関しては、5分走るだけでしんどいと聞きました。砂の上は環境が違うけど、ギャップとかはありますか?
私は12年前に始めたので、(今では)普通のサッカーが辛くてビーチで走る方が楽ですけど(笑)。
ただ、きついけど、気持ち良いと言う感覚はあります。日本人は畳で裸足の文化があるのでマッチしていると思います。裸足は健康に良いし、砂の魅力はいろいろな形であるので、様々な人に体験してもらいたいですね。
ー日本と海外のビーチサッカーの環境の差はありますか?
バルサ、バイエルン、ボカとかはトップチームのところにビーチがあります。アルゼンチンに行ったに見たのがサッカー場の半分が砂で、半分が芝でした。メッシやイニエスタもビーチでトレーニングしているので、海外はビーチの文化があるんじゃないかと思っています。
この前発表された世界ランキングで日本は6位から4位に上がりましたが、その上のブラジル、ポルトガル、ロシアはプロリーグがあるので。その中でスタジアムを持っているのは日本との違いですね。
ー普段使用されているコートは、どちらになるのですか?
東京都立川市の立飛ビーチです。元々はバーベキュー場で使われてますが、私が所属しているヴェルディが3年連続日本一、4年間公式戦で無敗の結果を出して、メインスポンサーの立飛ホールディングスさんに、ビーチを常設するため、砂を追加してもらいました。
ビーチサッカー専用コートのような形で毎朝練習させてもらっています。
「若い子のために環境を整える」
ー原口選手は個人スポンサーが17社と見ました。結構多い数だと思いますがどんな活動をされていたのですか?
今は19社に増えました。農家さんや服や美容室など様々なスポンサーがついていて、金銭面というより(物品)提供や(サービス)無料などの形です。
その獲得方法は2つあって、1つは紹介です。自分が2016年にアキレス腱を断裂して、復帰した時にテーピングが必要になって、キネシオのテーピングの社長を紹介してもらいました。
もう1つは飛び込みです。マウスピースはGoogleで検索して調べました。本社が東京だったので、電話して直接訪問して「スポンサーになってくださいと(笑)」。
(スポンサー獲得の)目的は2つあって、まずはビーチサッカーを知ってもらえることです。その人たちがビーチサッカーのことを発信してくれるので、競技をいろんな人に知ってもらえること。そして、今後は自分のスポンサーは若い選手に引き継いでいって、より良い環境でビーチサッカー をしてもらいたいのがもう一つの理由です。
ー選手活動される方の中で、プロでない選手がほとんどで、仕事を辞める方もいたとか、海外の大会に出るためにお金がかかると思います。
ほぼ全員アマチュアです。私も会社員ですし、バイトしている子もいるし。生活がギリギリの人もいるので、大変だと思っています。マイナースポーツあるあるかもしれないけど。その中でW杯のために仕事を辞めて、練習をもっとしようという選手もいました。
自分はアスリート社員という形で会社員として競技を優先しながら働いています。ですが、1番はプロリーグがあって、プロ選手として働いて、子供たちに勇気や感動を与えられるスポーツにしていきたいですね。
自分も10年前はアルバイトで自転車で練習場で通っていました。水道水しか飲んでいなかったし、ギリギリの生活でした。
ーアスリート社員として活動できている今の会社との出会いは大きいですか?
はい。一度ヴェルディを退団して、2020年にヴェルディに復帰した時にマネージャーに紹介してもらいました。
会社(※③)ではいつもランドマークタワーの40階でパソコンを打っています。(そこには)カバディ、ホッケー、ラクロスなど10人くらいアスリート社員がいますね。
※③:株式会社ProVision
ー本日はありがとうございました!ビーチサッカーや原口選手について多くの魅力を知ることができました。今後MYSPORTSや、僕自身でビーチサッカー に対して貢献できることはありますか?
一緒にビーチサッカーしましょう!そこでオーバーヘッドしまくれば良いです。オーバーヘッドすることはルール上、攻撃側が有利になるので、そのプレーが増えるんです。
誰でもキャプテン翼のようになれることが良いことですね!
ー是非体験させてもらいます!最後に伝えたいメッセージをお願いします。
ビーチサッカーは「するスポーツ」と「見るスポーツ」という側面があります。裸足で砂の上を走る快感があるなど様々な側面で楽しめるので、一度是非体験してもらって、選手になる人も出てきて欲しいし、ファンになって応援してもらいたいです!
原口翔太郎
ビーチサッカー日本代表・東京ヴェルディBS・株式会社ProVision(アスリート社員)・GRAMDE契約選手・アパレルブランドWLBA代表・MALIBUビーチサッカースクール代表
Twitter:原口翔太郎 Beach Soccer(OFFICIAL)
【インタビュー・執筆】
藤原昂亮
本メディア「MYSPORTS」の運営者。ARスポーツ「HADO」の選手としても活動し、日本ランキング18位。現在、マイナースポーツ雑誌作成中!
アスリート、チーム運営者、協会、企業の方などマイナースポーツに関することはご連絡ください。Twitter:@k0sk_vektor
お問い合わせはコチラ取材後記:ユニフォームやメダルなど取材の時に見せていただきました!サッカー日本代表と同じユニフォームであり、すごくカッコ良かったです。砂の上での新たな感覚を味わうため、ビーチサッカーを実際に体験してみたいと思っています!
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