カバディ女子日本代表に直撃!「灼熱カバディ」と「リアルカバディ」の違いとは

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「カバディ」主に南アジアで行われるスポーツであり、インド発祥のスポーツである。近年では、日本で漫画、そしてアニメで放送された「灼熱カバディ」がこのスポーツの有名な作品に挙げられる。そんな今回は、MYSPORTSにて実際に活動する選手に取材を行った。女子カバディ日本代表・ 坂本夏実選手のインタビュー前編では、競技の魅力から漫画「灼熱カバディ」とリアルなカバディの比較、そして国内の現状について話を伺った。

 

「カバディ、カバディ、カバディ」リズミカルに唱えながら何かをするスポーツ。これが私のカバディに対するイメージでした。取材にあたって、当時放送していたアニメ「灼熱カバディ」をAmazon Primeで一気見。イメージと全く違うスポーツで恥ずかしさを覚えたのと同時に「なんだこの面白いスポーツは!!」と、興奮しました。

【選手プロフィール】

カバディ日本代表 坂本夏実
大学の部活で人生初のカバディを体験。2019年、カバディ女子日本代表のキャプテンに就任。選手として日々練習をしながら、カバディの魅力をSNSで発信中!
Twitter:坂本夏実(さかな)@カバディ日本代表

 

【取材・執筆】

田代有里恵
取材を通じて『マイナースポーツ・選手の魅力を届けたい』。YouTubeを観たりゲームをするのも好きだが、スポーツを観たり汗を書くことも大好き。最近はモルックにドはまり中。

 カバディの魅力

 

ーカバディの知識がほとんどなかったので、「灼熱カバディ」を観てきました。坂本選手も観ていましたか?

はい!最終回は良いところで終わっているので、早く続きを観たいですね。

ーアニメの主人公と同様に坂本選手もサッカーをされていたとお伺いしています。

私は小学校の頃に水泳とサッカー、中学でバレーボール。高校のときは、母がママさんサッカーをやっていたのでそこに参加しつつ、部活動は軽音楽部に入ってドラムを叩いていました。

大学でも音楽を続けたかったのですが、飲みサーばかりで悩んでいた時に、友達に「カバディの体験があるから一緒に来て欲しい」と誘われました。

レイダーとしてタッチの練習中

 

ー友達に連れられて始めたカバディで今や日本代表。よほどの惹きつけられる魅力があったのですか?

そうですね。少し言い方は悪いのですが、最初はふざけた部活だと思っていました。「カバディ、カバディって言ってなんかするんでしょ」と。それでも、行くといきなりJAPANのウェアを着ている先輩たちがいて、いきなり日本代表に教えてもいました。

先輩たちは真剣に「カバディ、カバディ」と言うので、「ちゃんとしたスポーツなんだ」って感じて。実際やってみると鬼ごっこみたいで、人にタッチして得点して周りが喜んでくれる体験が楽しかったです。道具も使わず、お金もあまりかからない。結構いいなって、惹きつけられました。

 

ー日本代表になるには、ある程度センスも必要だと思います。今までの競技経験が、カバディに通じていることはありますか?

はい。技術的な部分では、カバディで相手の足を蹴る瞬間(※①)やその前の姿勢はサッカーに似ています。また、試合の全体的な流れ、心理的な状況はすごくバレーボールに似ています。田代さんもスポーツはされていましたか?

(※①)人にタッチして得点をする際に、手だけではなく足を使うこともできる。

ー私はテニスや卓球をしていました。

多分、ラケット競技にも通じるところがあると思います。相手が連続得点をして流れを作っている時ってあるじゃないですか。そんな時に「自分たちが何をするか」によって、その流れが良くなったり悪くなったりするみたいな、決定的な瞬間みたいなものがやっぱりカバディにもあるんですよね。

カバディではローナ(※②)をどちらが先に取るかとか、そのローナ取りに行く過程は連続得点なのか、相手と点数を取り取られを繰り返すのかだと、流れがすごく変わってきます。だから本当に流れのスポーツだなって思います。

カバディでもレイド(※③)が一人でタッチしに攻めに行くのですが、その瞬間は、ほぼ個人競技に近いです。その人がどう動くかによってチームの勝敗にも関わるので、そういう瞬間は心理的に追い込まれます。

(※②)相手チームの選手全員がアウトになった状態。相手チームに2点を与え、全員がコート内に復活できる

(※③)カバディを唱えながら相手コートに入って攻撃をすること。攻撃する人。

ーそういえばカバディはタックルもしますが、坂本選手は今までタックル系のスポーツは未経験でしたよね。

はい、最初は無理だろって思っていました。笑 ですが先輩にアンティ(※④)の上手い方が多かったんです。小柄だと相手の下に入り込んで倒すみたいな感じで、まさに灼熱カバディでいう畦道に近いような感じの動きのような強さです。私は身長が高く、難しいと思っていましたが、徐々に当たる事がすごく楽しくなってきて、今では当たるのが得意になりました。

(※④)攻撃を受けているチーム、選手。

倒れこみながらも自陣に帰ろうとする坂本選手(レイド)、周り(アンティ)はそれを阻止したい

 

灼熱カバディとリアルカバディの違い

 

ー攻めるレイドはたった一人で、誰をどうタッチして戻るかを短い時間で考えるのって心理戦ですよね。攻めの時間は30秒と見たのですが、それは短いですか、それとも長いですか?

30秒は短いです。実際「灼熱カバディ」だと、キャント(※⑤)を続ける限り攻撃が続く、って感じでしたけどそれは昔のルールです。というのも、言い続けられる限り攻撃が続くと、勝っているチームが何もしないで、ただカバディだけ言って帰るみたいなことが起きて、全然スポーツとして面白くないんですよね。

なので、時間に区切りをつけて点数の動きをつけようということでルールが変わったそうなんです。30秒で何ができるかを考えながらカバディを言い続けていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

(※⑤)レイダーは相手チームのコートに触れる前から、自陣のコートに戻るまでの間、「カバディ」と唱え続けなければならない。

ーキャントが続く限りというのは昔のルールだったんですね!ちなみに他にも「灼熱カバディ」と異なることや、共感できる所はありますか?

あの宵越(灼熱カバディの主人公)がロールキックだけで3点くらい得点するシーンがあるのですが、それはなかなかありません。笑
基本、蹴った動作で触れるのは一人なので。触った後に前側から捕まえに来た相手に触って3点、とかはできるんですけど。蹴りだけで、1,2,3点っていうのはないですね。笑

あとはスポーツを始めた経緯や、登場人物のそれぞれのbehind story とか。宵越もサッカーをやっていて、チームスポーツはやりたくない感じだったのに、カバディに惹かれていくところは、自分にシンクロしました。やっぱりチームスポーツっていいなって思わされました。

また、一人でタッチしに行くレイドの時は特に個人の創造性や技術が問われるので、そういったチームと個のバランスが凄く良いからのめり込んでいくんだろうな、っていう心理状況は分かります。

伊達と水澄(灼熱カバディの登場人物)の友情物語や、畦道が田舎から出てきて今までの経験がカバディに生きるところ。水澄がやっていた喧嘩がアンティに生きるとか。笑 いろんな角度から成長していくことや、いろんな始め方やストーリーがあるところ。いろんなことがカバディで生かされる所はすごい共感しますね。実際にいろんな選手がいて、女子の中にも最初からカバディを知っている人は少ないです。大学に部活があって私と同じように始めた人もいれば、もともとサッカー部で人数が足りないカバディ部に助っ人として出る、みたいな人もそこから日本代表になった人もいるし。ほんと様々です。

 

国内の女子カバディの現状

 

ー女子の人数が日本全国で38人しかいないという情報を聞きましたが、本当でしょうか。

そうですね。実際には2019年の全日本大会にエントリーしていた人数が38人です。全日本には代表選手はもちろん出ますし、地域のチームや、大学の授業で取っている人も出ています。

アンティの一人がおとり、後ろで手を組んだ二人がレイドの坂本選手を止める。

ー競技人口はかなり少ないですね。

そうですね。しかも当時からから2年経ち減っています。何を持って競技人口とするかはあるんですけど。

今は練習のアナウンスをする LINEのグループが30人くらい。その他に昔カバディをやっていた人が大会にだけ来るということもあるので、それを競技人口として数えるともう少しいるかもしれません。あとは毎月体験会をしているんですけど、そこで入ってきた人たちも合わせてっていう感じですね。

ー体験会の人数はどれくらい集まるんですか?

平均すると10人程度ですね。

ー体験会は坂本選手のTwitterを見て申し込んでくるんですか?

そうですね。最近、断トツで多いのは「灼熱カバディ」きっかけでカバディを知って、「カバディ 体験する」と検索されて私のTwitterに行きつきます。かなり灼熱カバディの力が大きいです。

ーさすがアニメの力ですね!

やっぱり地上波でやるのは大きかったですね。笑

日本代表選手の日常

 

ー坂本選手の1日のスケジュールはどんな感じなのでしょうか?

今は週3くらいで練習をしています。平日の体育館は、緊急事態宣言中で営業時間が少ないので使わないことになっているので、ほとんど公園で練習をしています。

私はカバディのために仕事を辞めたので、バイトをして、終わってから夜にみんなが集まれる時間に練習をしています。大体平日の練習は夜の7時半から9時の2時間です。土曜日はどこも体育館が人気すぎて予約が取れないので、日曜日が多いです。時間もその都度で昼間だったり夜だったり。その他の時間はジムでトレーニングをしています。 

ー仕事を辞めるなんてカバディにフルコミットされているんですね。日本代表選手は皆さんどんな感じなんですか?

全然違いますよ、私だけですね。笑 他の人は仕事をしながらカバディをしています。学生と社会人の数は同じくらいで、学生は大学生が多いですね。

ーちなみに歳上の方は大体いくつぐらいなんですか?

最近体験して入ってきた方で最年長は34歳です。

ー20代、30代が多いのは体力勝負的な所もあるからですかね?

そうですね。あとは練習の融通が利くという面では、学生の存在は大きいと個人的にすごく思います。社会人だと仕事とカバディをするとなると、カバディに割ける時間が圧倒的に少なくなってしまうので。なので、比較的時間を取れる高校生や大学生とか若い人にもっと来てもらいたいです。

また、アジア大会(※⑥)も近いので、即戦力となるようなスポーツ経験者や、元アスリートの方も積極的に募集しています。

(※⑥)2022年9月に開催予定。

ー練習はどんなことをしていますか?

去年のコロナ禍では、みんなで練習するのは1年のうち3分の1もなく、ほぼ個人練習でした。家の壁にタッチするだけの練習、他にはサッカーやテニスのように壁を相手に見立てて練習したりですかね。

カバディでは相手が捕まえに来たら手を出してよける技があるんですけど、そういうのを、壁を使って練習したりですね。あとは私のInstagramとかにも載っているんですけど、公園のパンダとかの置物の足をタッチしてアンクルキャッチという、足首を取る練習をしたりとか。笑 あとは、家が近い隣町の子と一緒に練習をして、2人だけで技の練習をしたりだとか、コーンを置いてアジリティトレーニングをしたり…色々やっていましたね。

アンクルキャッチの練習中

 

前編はここまでとなります。後編はこちら→カバディ戦術論!日本代表が語る世界への挑戦。鍵はSNS

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