未来に繋ぐコーフボール日本代表の戦いー歓喜と涙、南アフリカの14日間

2019年8月上旬、南アフリカ、ダーバンという異国の地で戦う日本人チームの姿があった。

コーフボールとは

あなたはコーフボールという競技をご存知だろうか。男女混合のスポーツ。バスケに似たスポーツではあるが、ドリブル禁止、360°どこからでもゴールを狙える、接触プレーは禁止されているなどの特徴がある。オランダで発祥し、世界選手権の開催は今回が11度目。日本ではマイナースポーツと分類されるだろうが、現在は全国で7つのチームが活動している。

日本コーフボールの歴史

日本コーフボール界の歴史は、想像より古いと思われるだろうか。1991年に協会が設立された。世界選手権への初出場は1999年、続く2003年に大会出場も、どちらも勝利はなく最下位に沈んだ。その後は世界選手権への出場が叶わず、10年もの時が過ぎる。

今から5年前のアジア・オセアニアコーフボール選手権2014(以下、AOKC)この大会で上位に入れば世界選手権への出場機会を獲得できる。しかし、集まったメンバーはまだ初心者が多く、またしても世界選手権への切符は持ち越しとなった。

世界選手権への出場を目標に、本格的に改革へと走り始めた。AOKC2018を日本に誘致し、選手を揃えて大会に臨んだ。

大会では台湾、中国、オーストラリア、香港に続く5位の成績を収め、翌年行われる世界選手権への出場権を獲得。普及、強化面の活動に力を入れた日本コーフボールの取組が実り出場枠を勝ち取ったのだ。それは、選手、監督、大会運営に関わるスタッフ、日本コーフボールのファミリーでもぎ取った世界選手権への切符だった。

日本代表としては16年ぶりの出場、現メンバーの最古参は古木監督兼選手は、コーフボールを始め14年。つまり今大会の選手は、誰一人この舞台で戦った者はいない。

参加する20チームの中では、2番目に低い世界ランクの日本。「まずはコーフボールを楽しむ、そしてチャレンジの姿勢を忘れないこと」勝利を目指し、全17名の選手・スタッフが一丸となって世界の舞台に挑んだ。

日本代表に立ちはだかる世界の壁

ついに開幕した世界選手権。日本はドイツ、ポルトガル、南アフリカと同グループに所属。初戦、第二戦は世界ランキング5位のドイツ、同8位のポルトガル相手に差を見せつけれる。

ヨーロッパ相手に歯が立たず、悔しさを味わうには25点は十分すぎる差だった。明らかな身長差だけでなく、パスやシュート、守備と個人のレベルの高さを目の当たりにした。世界トップ10に到達するまでのロードマップをどのように描くのか。

リーグ戦があり、定期的に試合のできる環境。若い世代が次々に出てくる仕組み。本気で世界で上に行くためには、今の普及状況から数段階レベルを上げる必要がありそうだ。

歓喜の瞬間

グループ予選では3位以上に入ることで、上位16カ国の順位決定戦に進出が決定する。グループ最終戦の相手は南アフリカ。世界ランキング15位、日本の24位に対して数字上では格上だ。開催国相手に今大会初の勝利、そして世界選手権史上初の勝利を目指す日本代表。

試合は序盤から攻勢に出る。古木を筆頭に女性選手が得点を重ねる理想的な試合展開。1,2戦目以上に集中し、相手の攻撃を防ぎ、確実にシュートを決めていく。守備面でも相手に自由に攻撃させず失点を抑える。

試合終盤、9点目の差をつけるシュートが決まるとその瞬間は訪れた。体育館にブザーが鳴り響き、日本選手の顔には笑顔が弾ける。大会初勝利。徐々に嬉しさが伝わり、ベンチに戻ると初勝利の喜びに抱き合う者、涙を流す者。第一の目標を達成し、ベスト16へと駒を進めた。

日本ではYoutubeの生配信で観戦していたコーフボールファミリーが、SNS上で祝福コメントを投稿していた。一歩一歩、前に進んでいたからこそ見ることのできたこの景色。

これまで関わってきた全員の活動がこの勝利に繋がった。

南アフリカに勝利した日本代表。ベスト16に進むと、最初の相手はアジア最強、世界でもトップ3に入る超強豪の台湾。正直なところ勝てる見込みは限りなく0に近い。試合は攻守が凄まじい速さで入れ替わる展開に。台湾の攻撃力に圧倒されるも、日本も必死に食らいついた。失点は42と今大会で最多だったが、得点も22とどの試合よりも多くのシュートを決めた。

翌日のイングランド戦、世界ランクでは6位と格上だ。昨日の試合に続いて、序盤の試合の入りは非常に素晴らしかった。しかし、徐々に自力の差でイングランドが日本を突き放した。ヨーロッパの強豪相手との3試合。決してこの経験は無駄にしたくない。

トーナメントに入り二試合は実力差も大きかったが、次なる相手オーストラリアは日本より格上ではあるものの、決して勝てない相手ではない。アジア・オセアニアの同地域のライバルとして、そして一つでも上の順位を目指すため負けられない。「一点でもオーストラリアを上回ろう。」その言葉と共にチーム一丸となり試合に入った。

立ち上がり、オーストラリアに引けをとらない日本の選手たち。第1Qはお互いが6点ずつ取り合う展開に。第2Qから力を増したオーストラリアに前半は4点のリードを許す。

絶対に逆転すると信じ、コート上だけでなく、ベンチからも声を出してメンバー全員で戦った。

少しでも点差を詰めたい日本だが、シュートが入らず苦しむ。その間も得点を重ねるオーストラリア。じわじわと広げられる点差、少なくなる残り時間に、焦りがプレーに現れてしまう。第4Qのタイムアップを知らせるブザーが鳴ったとき、日本の13点に対し、オーストラリアは21点を取っていた。

古木監督、そしてチーム最年少でキャプテンを務める永井のオーストラリア戦後に皆の中で語った。その場にいた全員の悔しさを全てまとめた言葉だった。

13−21。8点差を結果だけで見ると大きな差と見えてしまう。それでも本気で勝とうと必死に食らいつき、最後まで戦った日本。前後半でついた4点ずつの差が、結果に現れた。近づいたようでまだ及ばない。自分たちの現在地を知る重要な、それでいて非常に悔しい一戦となった。

未来へ

最終戦、長く続いたダーバンでの生活もこのアイルランドとの一戦で終わる。1つでも上の順位へ、勝利を目指し戦った。前日の悔しさを引きずることなく試合に入る。一歩も譲らない展開で、両者が得点を取り合う試合に。前半を1点のビハインドで折り返すと、第3Qで日本がリードを広げ、勝利へ近づいた。

日本に流れが傾いてきた。そう思ったのも束の間、第4Qのアイルランドの猛攻で形勢は逆転。まだどちらが勝つかわからない試合だ。リードを守るために、シュートを打たせない守備。終盤、大矢が決めた日本の19点目が決勝点となった。

日本の意地。アジアの意地。強豪国の多いヨーロッパの国に対して大きな1勝を掴んだ。結果は15位で大会を終えることになる。最終戦、1点差という僅差での勝利。今大会で一層力強くなった日本代表。

勝利した南アフリカ、アイルランド戦。得点比率を見ると、南ア戦では女性が、アイルランド戦では男性が多くの得点を占めていた。男女が平等に全力でのプレーができるコーフボールだからこそ見られるデータだろう。この競技の魅力の一つである。

次の世界選手権はまた4年後に開催される。コートでの悔しさはコートの上でしか返すことはできない。今回の経験を活かし今後コートで引っ張る選手、一方で一線を引いて次世代に託す選手。今大会の経験を活かすも殺すも17人に託されている。

今後、日本代表を目指す選手も、まだ競技を始めてない選手にも、十分4年後のコートに立てる可能性はある。トップチームに限らず、アンダーカテゴリーの大会もあるが、日本は若い世代の選手が非常に少ない。男女共に選手層を増やし、年齢層も広げることが必要になりそうだ。チームJAPAN、ダーバンでの戦いはここで締めくくることになるが、日本代表の戦いはまだ始まったばかりだ。

 

【コーフボール】
男4女4のmix genderスポーツ。ドリブル禁止でパス主体のゲーム。ゴール周り360°どこからでもシュート可能なスポーツ。現在は、東京、大阪、埼玉、千葉、石川、横浜、岡山のチームが主に活動している。

日本コーフボール協会
公式HP:http://korfball.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/Japan_Korfball?s=17

 

こーすけ:https://twitter.com/k0sk_vektor
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コーフボール日本代表の広報として参加した南アフリカ・コーフボール世界選手権の出来事のコラムを書きました。
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