カバディ戦術論!日本代表が語る世界への挑戦。鍵はSNS

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アニメ「灼熱カバディ」の影響によって、多くの参加者が増えたと言うカバディ。今回行ったカバディ女子日本代表・坂本夏実選手に取材した記事の後編では、カバディの戦術面や、今後の日本代表活動・普及活動に関して伺った。

前編の記事はこちら

こんな戦術はアリ?ナシ?

ー「当たる」ということに関して、グーパンチがNGなのは理解できます。しかし、相手を振りほどいたり押し倒す際に、多少暴力的になりそうだなって想像しました。明確にそこの基準はありますか?

ありますね。故意的に殴ったり、足の裏で蹴りにいくのは危険なのでダメです 。自分が逃げるために相手を押し倒すとか、得点をするための動きなら許されます。

ー足の裏でキックしたらダメなんですか!

相手を傷つけようと故意に行うのはダメです。蹴ろうとして足の裏が触っちゃうのはありですけど。笑 

あとは男子の場合だと「これまずいだろ」くらいのぶつかり合いになることもあります。一方で、女子の場合はコートが狭いこともあって、すぐに自陣に帰れます。そういう接触が沢山起きる前にレイドが帰って得点、あるいはアンティが捕まえて終わるっていうことが多いですね。やっていくうちに慣れてきて、セーフとアウトの線引きが分かってきますよ。

ロールキックを繰り出す坂本選手(レイド)。キックは素早く足元に。

ー戦術的な面では、最初の7対1の場面などは圧倒的に守る側の方が有利だと思います。なのでレイドを牽制するのではなく、皆でまとまってコートの外にレイドを押し出しに行く方がいいのではないかと思いました。

コートの深い位置にまでレイドが入ってきていれば、レイドが帰るまでの距離があるので、みんなで集まれれば可能です。ですが、コートの奥にまで入ってきてない場合はアンティの方が不利なんです。浅い場所で仕掛けに行ってレイドに気づかれたら、レイドは倒れるだけでコートに帰れちゃう距離の場合があるので、深いところに入ってこないと仕掛けられません。

ーそう簡単にはいかないですね。笑

でもいい着眼点ですね。最初は「これいけるんじゃないか」と思うんですよ。でも実際やってみると「あれ違うな」となって、それも面白いんですよね。

思い通りに行かないので、いろいろ発展してきます。。

いろんな戦術があるので知れば知るほど「こういう風になってこうなるんだ」とか「こう思っていたけど全然違うわ」みたいなことが沢山あって面白いですね。

ー知れば知るほど面白いですね!あともう一つ戦術的なことで、アンティの人数が少なくなってしまった場合は捕まえることを考えずに、ひたすら鬼ごっこのようにコート中を30秒間逃げ回るっていうことは戦術的にありますか?

あります。点差や残り時間やアンティにいる人たちで変わってきます。例えば主力のアンティがいる場合は、その人が得点しちゃった方が相手に時間を使われずに済むので、逃げる選択肢は自動的になくなります。

あとは、試合の序盤とかで点数の打ち合いになっている時は必ず点数を取りに行くスタイルですね。ですが勝つ上では自分たちで時間を上手くコントロールする力が必要で、例えば後半になって点差がすごく開いていて勝てる時は、むやみやたらにアンティでしかけて、レイドに触られるという無駄な失点を極力減らしたいです。そういう時は時間を使おうって決めて、戦術としてやることはありますね。

ーおー!あるんですね。

やっぱり点数が低い方は触りたい、触って点差を埋めたいっていう心理があります。リードしている方はもう点数を取っているからむやみに取りにいかず、相手の動きに合わせて逃げ回ることを繰り返し、時間切れを誘って相手のメンタルをえぐって追い込んでいきます。

合図を送って味方に指示出しをする坂本選手(アンティ)。

日本のカバディと世界のカバディ

ーちなみに、坂本選手の得意な戦術とか、日本代表の得意な戦術っていうのはありますか?

チームを作ってからコロナの影響で遠征や、競技人口が少なくて練習試合もあまり行えていないので、戦術を試す場面すごく少なくて。今これがうちのチームの売りと言えるものはないですね。

チームとしてまだ誰が代表に選ばれて、どういうチームでどういうポジションでやるかというのも決まっていないので。私個人としては自分がアンティプレイヤーなので、チームで点数を取ること、連携して取りに行くということを戦術として強く意識しています。

というのも、アンティで得点する時とレイドで得点する時って同じ得点でもちょっと違ったりするんですよね。レイドで得点したら個人のプレーで得点したことで、もちろんみんな喜びますけど、その子が上手いねとかその子がよくやったねとなるんですよ。

でもアンティではチームの連携プレーになるので点数を取れたら一人の功績じゃなくて、みんなの功績になるのでより盛り上がります。「ミスった」って自分が思ったとしても味方が助けてくれて得点になりますしね。

前回やったエキシビジョンマッチでは私のチームが勝ったのですが、その時も「誰かが点数を取ったら必ず集まろう」とルールを決めていました。動いているレイドだけを見ないで味方が仕掛ける瞬間もちゃんと見て、「取った」って思ったらすぐ突っ込んでフォローしに行くことがちゃんとできていたので、守りが凄く安定していた感じがあったんです。それはきっと今後も生きると思うので、国内試合や国際試合でもそういうプレーを出していきたいです。

ー遠征というのは他大学に練習しに行ったりするのですか?

遠征は、国内の場合は男女一緒に行って女子は女子で練習や試合をしてということもあれば、国外へ出て前回は台湾に行ったんですけど、台湾の大学のチームと練習試合をしてとかもありますね。

ー台湾遠征があったんですね!そういえば、カバディが強い国はどこですか?発祥の地であるインドは強いイメージはあります。

インド・イランが2強と言われています。やっぱりカバディはインドが発祥ということもあって、インドの周りの国々が盛んです。逆にヨーロッパとかはあんまりやってません。ですが、、最近はジャイアントキリングが起きたりしているんです。

2018年アジア大会では韓国がインドに勝ったり、イランとインドが戦うとイランが負けることが多かったんですけどイランが勝ったりとか、台湾もすごく強くなってきていて、今まではメダルまでいったことなかったのに前回のアジア大会では銅メダル取ったり。

台湾では国を上げてカバディを支援しているみたいで、全国大会で優勝したら100万円もらえる賞金もあったり、国内試合でもスポンサーがついてコートの端っこに広告が貼ってあったりもしていて、日本も見習いたいところが多いですね。

ー日本で行われる試合の頻度はどれくらいですか?

コロナ以前は、例年1月くらいにニューイヤー大会があって、その次に若手メインのチャレンジカップがあって、その次が東日本大会で西日本大会、全日本大会っていう感じです。

ー意外と試合はあるんですね。

コロナがない状態であれば3ヶ月に1回くらいは必ずありました。もう最後にできたのが2019年の全日本大会でそれ以降は試合ができていないですし、9月に予定されている東日本大会もまだどうなるか分からない状態ですね。

※第14回東日本カバディ選手権大会が9月11日(土)~12日(日)に開催されました。
坂本選手のチーム(YKC)は準優勝でした。おめでとうございます!

 女子カバディ日本代表はSNSで集める!

ー最後に今後の目標とカバディを知らない人・記事を読んでくださった方へのメッセージなどがあればお願いします。

今後の目標は、まずはアジア大会でメダルを取ることです。そこまで行くには競技人口を増やして、選考できる人数を集める必要があります。

その所で私の構想としてはアジア大会に出るってなった時に「この人は Twitter から、あの人はインスタから来たんだよ」みたいな感じで「SNSで日本代表を集めたんです」と出来たらすごく面白いなって思います。

他のスポーツではなかなかないと思いますしね!それに、カバディを始めようかなとかカバディの名前は知っているけどよくわからないなっていう方は、まずはカバディについて調べてもらいたいですし、私の Instagramや Twitterや TikTokとかで分かりやすくカバディの解説や、面白さを伝えているので見ていただけたらいいなと思います。

始めたい、やってみたいって思っている人は、もう本当にやってみてください!その後のことはその後に考えればいいので!笑 とりあえずやってみることで、本当に人生が変わります!

私は変わりました。まさか日本代表になるなんて思ってなかったです。笑 誰にでも努力すればチャンスはある話なので、灼熱カバディを見て興味を持てくれた方ももちろんですし、カバディを知っていた方や、スポーツ選手を引退してセカンドキャリアを考えている方とかにも役立てると思います!

あらゆるスポーツのあらゆる所を良いとこ取りして、世界で勝てるようなチームを作っていきたいので、一緒に世界を目指す仲間を募集しております!お願いします!

集合写真

 

【選手プロフィール】

カバディ日本代表 坂本夏実
大学の部活で人生初のカバディを体験。2019年、カバディ女子日本代表のキャプテンに就任。選手として日々練習をしながら、カバディの魅力をSNSで発信中!
Twitter:坂本夏実(さかな)@カバディ日本代表

 

【ライター】

田代有里恵
取材を通じて『マイナースポーツ・選手の魅力を届けたい』。YouTubeを観たりゲームをするのも好きだが、スポーツを観たり汗を書くことも大好き。最近はモルックにドはまり中。